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ブドウ糖輸液後同じセットを使って輸血をしたら凝固してしまいました。これはどうしてですか?

血液製剤は単独輸血が原則ですが、血管確保が難しい場合に他薬剤と配合されること等があるようです。

この場合は、ブドウ糖による配合変化が原因で、凝固が起こったものと考えられます。赤血球の表面はシアル酸のカルボキシル基によって負に荷電しています。ナトリウムイオンを含む環境では赤血球の周囲にナトリウムイオンが引っ張られ、赤血球の周りに陽イオン層を作るために赤血球同士が相反発し、一定以上に近づきません(図1)。ところが糖液中では、この陽イオン層ができず、赤血球同士が凝集しやすくなると考えられます。

また、凝集の他に糖が原因で溶血の起こることがあります。特に、ブドウ糖液内に赤血球を浮遊させると、ブドウ糖が媒介輸送によって赤血球膜内にとりこまれ浸透圧差が細胞内外に生じます。その結果、赤血球内への流入分だけ細胞外が低張となり溶血が起こります(図2)。

血液製剤との混注で最も安全と考えられるのは生理食塩液ですが、安易な混注は血液製剤及び薬剤の変性や細菌汚染等を引き起こす恐れもありますので、できるだけ避けるべきでしょう。

図1

図2

参考文献

  1. 日赤薬剤師会 血液センター部門委員会 本田 盈:共同研究「血液製剤との配合薬剤の実態調査」.
    日赤薬剤師会会誌,56:7-14,1988.
  2. 日赤薬剤師会 血液センター部門委員会 本田 盈:共同研究「血液製剤と薬剤との混注」について.
    日赤薬剤師会会誌,56:15-21,1988.
  3. 大熊 重則 他:赤血球の浸透圧抵抗と溶血に及ぼす糖類の影響.
    日本輸血学会雑誌, 31(1):33-35,1985.
  4. 田村 眞 他:赤血球濃厚液の輸血に用いる輸液製剤に関する検討.
    日本輸血学会雑誌, 30(1):35-36,1984.
  5. 中野 智子 他:血液製剤に対するクレームの検討例(チューブ内凝集について).
    日赤薬剤師会会誌,56:142-146,1988.
  6. 志茂田 治 他:赤血球濃厚液希釈剤としてのブドウ糖-食塩液DSI.
    臨床麻酔,10/11:1447-1450,1986.