術前に血液を用意しても、輸血を行わない場合や、準備したよりも実際の使用量が少ない場合がしばしばあります。
血液の有効利用、業務の省力化・経費の削減など輸血業務の効率化を目的とした方法として、MSBOSとType&Screen(T&S)が挙げられます。
T&Sは出血量が500~600mL以下と少なく、術中の輸血の可能性が30%以下と低いことが予想される待機的手術において適用されます。
その際、患者のABO・Rh血液型と不規則抗体検査を実施し、ABO血液型に異常がなく、Rh(D)陽性で、不規則抗体陰性の場合には術前に交差適合試験を実施しません。もし、緊急に輸血が必要となった場合は、オモテ試験によりABO血液型のみを確認するか、あるいは交差適合試験(主試験)を生食法(迅速法)で実施し、適合血を輸血する方法をいいます(表1)。
表1 Type&Screen(T&S)とは
目的
- 手術用血液製剤の有効利用
- 輸血検査業務の省力化、合理化
- 医療費の削減
適応
Rh陽性で不規則抗体がない例で
- 術中輸血の可能性が30%以下
- 予測出血量が600mL以下の待機的手術患者
輸血時
- 術前の交差適合試験は行わない
- 必要時に血液を準備する
- ABOの適合性のみ確認
(血液型または生食法による簡便な適合性)
T&Sは、血液の有効利用対策においてMSBOSと不離一体をなすものですが、腹部外科手術領域においては全手術の40%がT&Sで済ませられます(表2)。
表2 T&S適応術式
T&Sの導入は返品血減少による血液製剤の有効利用、交差適合試験数の減少による輸血関連業務の省力化・経費の削減などの利点があります。
また、臨床側からのABO・Rh適合、不規則抗体陰性のみで、交差適合試験なしで安全に輸血ができるかの不安に対しては、T&Sで異型輸血を99%防ぐことが可能であり、交差適合試験が陽性となる頻度は0.03%とされており、T&Sを支える輸血検査技術の裏付けや事務的エラーのない体制の十分な説明と理解が得られれば、T&Sで安全な輸血が可能です。T&Sを導入することによる医療機関各部門のメリットを表3に示します。