輸血用の血液を無駄なく有効に活用することは、血液の確保はもとより医療費の軽減につながります。一般に手術に際し血液が準備され、特定の患者血液と交差適合試験が行われると、その血液は一人の患者のためにのみ保管され、他の患者に使用されず、使われなかったものは残存有効期間が短くなったり、期限切れで使用不能となることもしばしばです。さらに、待機的に手術を行う症例のなかで、血液の注文を受け交差適合試験を行った血液の数(Crossmatch;C)が、実際に輸血された血液の数(Transfusion;T)をはるかに上回る場合は、未使用の血液を残すだけでなく無駄な交差適合試験を行っていることにもなります。
一方、現在行われている多くの手術術式は定型化されており、待機手術では術式別の必要な輸血量もほぼ一定しており、適切な血液の確保量があれば、無駄に血液を準備することなく輸血を行うことができます。
最大手術血液準備量(maximum surgical blood order schedule;MSBOS)とは、術式により決められた血液量のみを準備し、余分な血液を用意することなく、交差適合試験件数を減らすと同時に、血液を一人の特定患者にのみ固定しないで有効に活用することを目的としたものです。
MSBOSは、一般には定型的な手術の平均輸血量の1.5倍としている場合が多いが、実際の輸血に際しできるだけ理想のC/T比に近づけるよう、それぞれの設定が必要であり、輸血の安全性を考え患者の血液型抗体スクリーニングが完全に施行され、血液の供給体制が整っている条件で各術式、各施設の経験を基に考慮する必要があります。