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全国のありがとうの声

医師も輸血を受けて救われる

村上博さん

一般社団法人愛媛県医師会 会長
村上 博さん

【輸血に命を救われて】

令和3年8月、私は愛媛県医師会長として愛媛県におけるコロナウイルス感染拡大第4波・第5波と真正面から対峙することになり、手ごわいウイルスにだいぶんストレスをかかえていました。8月のある夜、大量の下血があり、立ち上がった時に目の前が真っ白になって気を失いそうになりました。これは急速に大量出血した際の貧血症状か血圧低下によるものです。普通なら救急車を要請するところですね、ところが医師と言う職業柄か、明日の診療が気になってか、妙に気持ちは醒めており客観的に「これなら2リットルくらいの出血かな?」「2回目の胃潰瘍かな?」「どこで検査を受けるのがいいだろうか」考えていました。

翌朝起きたとき顔面は蒼白でした。やはり下血しています。ただ気持ちはしっかり持って......診察を始める前に血液検査をしたところ、普段なら約15ある血色素も5まで低下しており高度の貧血を呈していました。これを血色素9くらいにまで持ち直すには赤血球濃厚液8単位は必要かなと計算し愛媛県赤十字血液センターに輸血の手配をしたところ、あっという間に届けてくださいました。

広島出張の際はスーパージェットを用い広島宇品港と松山観光港を往復します。松山からの出発時や広島からの帰りに港のカウンターのそばに血液センターの大きな保冷バッグが置いてあるのを時々見かけます。現在、愛媛県で献血していただいた血液は松山で血液製剤化するのではなく中四国ブロック血液センターにおいて製剤化しています。広島出張の時、血液センターの大きな保冷バッグを拝見して、「この中にどなたが献血された血液が入っているのだろうか?」「どれくらいの血液がはいっているのだろうか」「この血液がどんな患者さんの命を救うのだろうか?」「頑張れよ血液!」そんなことを考えながら心の中で応援していました。まさに究極の無償のボランティアです。

現代医学でも輸血に代用できる薬剤は開発されていません。人工血液も開発されていません。その無償の究極のボランティアである献血から生まれた血液製剤である赤血球濃厚液8単位が私の命を救ってくれました。計算通り血色素は9まで上がり、しんどくてたまらなかった身体はうんと楽になりました。後日の胃カメラと大腸ファイバー検査では新鮮な胃潰瘍が2個見つかりました。平成25年に続き2回目の出血性胃潰瘍です。2回ともストレス性と診断されました。

私が今日も元気にコロナウイルス感染拡大第7波と闘っていくことができるのも昨年の大出血時に、お名前こそ存じ上げませんが4人の崇高なボランティアで400ccの献血をしてくださった皆さんの血液、合計8単位で私は命を救われ仕事に復帰することができました。献血してくださった4名のかたは私の命の恩人です。心から感謝を申し上げます。

この物語には最後にオチがあります。命を救っていただいた感謝の気持ちをどうやって具体化しようか考えた挙句に、「献血をしよう!」と思い、松山市大街道にある献血ルームを訪れたところ「今までに一度でも輸血を受けたことのある人は献血できない」と知らされ、満を持して献血ルームを訪れたのに拍子抜けしたところです。それならば...ということで気を引き締めて皆さんが一日も早くコロナから解放されるようコロナウイルスと闘っていくことでご恩返しとさせていただいているところです。

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