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所長のつぶや記

所長ごあいさつ(平成30年6月)

徳島県赤十字血液センター所長

6月、雨の季節です。徳島は昨年より23日早い梅雨入りでした。大雨による被害がでないことを願います。そして、食中毒に要注意です。生水は飲まず体調に気をつけて乗り切っていきたいと思います。

「入梅や花柄の傘用意して」(加藤ひかり)

医療に携わる身でありながら、自分が病気になるなどとは思わずに過ごしていました。ところがある日、排尿時に痛みを覚え、赤い尿が出たのです。症状は日ごとに悪化し、排尿時の痛みは耐え難く、尿は血液と区別できないほど真っ赤になりました。出血性膀胱炎と診断されて入院。排尿しなくて済むように、膀胱内にカテーテルを留置してくれたお蔭で、排尿時痛から開放されました。ところが数日後、膀胱内にできた血液の塊がカテーテルの穴を塞ぎ、尿が排出されなくなりました。尿閉という状態です。尿を出したいのに出せない苦しさ、辛さに、文字通り地団駄を踏みました。早朝にもかかわらず、主治医のU先生が駆けつけカテーテルを抜去してくれた時の安堵感、開放感はなんと表現したらよいのか。

膀胱炎は徐々に良くなっていったのですが、何故か微熱が続き、体がだるくて仕方がありませんでした。出血性膀胱炎の原因として、薬剤(とくに抗がん剤)、放射線治療の副作用、ウイルス感染などが知られています。私の場合は他に該当する原因が無いため、ウイルス性の可能性が高いと考えられました。成人のウイルス性出血性膀胱炎は免疫力が低下した人に発症することが多いため、主治医等は、私に何か免疫低下を起こす基礎疾患(例えば白血病や悪性リンパ腫などの血液のがん)があり、それが微熱の原因ではないかと考えたようです。CT検査をすると、普通は骨盤内にみられないものが見つかり、悪性リンパ腫の可能性があると説明を受けました。診断確定のために組織検査をすることになり、全身麻酔の下で開腹して問題の組織を採取してもらいました。

その時、私自身は悪性リンパ腫にほぼ間違いないと覚悟していました。自分はどうなっても仕方がない、病を受け入れようかと思いましたが、高校生と中学生の子どもたちのことが心配でした。全身麻酔から醒めようかという時に、U先生が「先生、benign(ベナインと読みます。『良性』という意味です。)でしたよ!」と大きな声で知らせてくれました。「ああ助かった」とホッとして、また眠りに落ちました。

しかしその後も微熱は続き、37.5度程度ですが倦怠感が強く食欲もありませんでした。微熱は感染症、膠原病、悪性腫瘍、ホルモン異常など種々の原因で起こりますが、原因不明のこともあります。私の場合も原因が分からず、不安な日々を送りました。ある日、後輩医師から薬剤熱(薬が原因の発熱)ではないかと指摘されました。薬剤も微熱の原因として忘れてはならないものですが、膀胱炎発症後に開始した薬だったので、疑っていませんでした。薬を中止したところ、翌日から微熱は治まりました。この間約3ヵ月、不安や葛藤があり、家族に心配をかけました。病院のスタッフには優しくしていただき、大変感謝しています。この経験を通して、人の気持ちに寄り添う大切さがそれまで以上に理解できるようになったと思います。

血液センターの職員は、輸血を必要とする患者さんに思いを馳せるとともに、献血をして下さった方への感謝の気持ちを胸に、日々の業務にあたっております。私たちの使命は、24時間、365日いつでも、どこへでも安心、安全な血液を届けることです。現在、血液を人工的に造ることはできません。輸血に使う血液はすべて、善意の献血によって集められています。県民の皆様のご理解とご協力がなければ、使命を果たすことはできません。「輸血が必要な人が、顔の見えない誰かの善意によって助かる。」それが普通のこととして行われています。とてもすごいことです。いつの日か、人工血液が実用化され献血が役割を終えるまで、皆様のご協力をお願いします。

平成30年6月吉日
徳島県赤十字血液センター 所長 浦野 芳夫

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