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所長のつぶや記

所長ごあいさつ(平成30年8月)

徳島県赤十字血液センター所長

6月の「大阪北部地震」の傷が癒えぬ中、「平成30年7月豪雨」が多くの尊い命を奪い、甚大な被害をもたらしました。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。1日も早く平常に戻りますよう願っております。

「山豪雨全山滝となりにけり」(福田蓼汀)

気象庁は7月5日午後に緊急記者会見を開き「非常に激しい雨が断続的に数日間降り続き、記録的な大雨になるおそれがある」として、土砂災害や川の氾濫などに厳重に警戒するよう呼び掛けました。台風ではなく、梅雨前線に関する事前の記者会見は異例のことだそうです。そして翌6日には、経験したことのないような大雨が8日まで続き非常に危険であること、土砂災害や河川の増水・氾濫に厳重な警戒が必要であることを発表しました。

しかし、これほどの被害を想像した人が、一体どれほどいたでしょうか。

私たちは、自然災害や事件、事故など予期しない非日常的な事態に遭遇した時に、『自分は大丈夫だろう』と根拠のない思い込みをしてしまいがちです。心理学では「正常性バイアス」というそうです。「バイアス」とは偏見、思い込み、先入観といった意味です。今回被害に遭われた広島の中年男性がニュースのインタビューに答えていました。「4年前に近くで大雨による土砂災害があったけれども、自分のところは大丈夫だと思っていた」。多くの人に正常性バイアスが働いていたと思われます。
洪水ハザードマップで家が水没地域にある私自身も、吉野川上流が氾濫危険水位に達したというニュースを聞いても、「上流のこと」なので大丈夫だろうと根拠なく思いました。
もともと、正常性バイアスは人の心を守る安全装置の一つだそうです。小さな出来事一つひとつに敏感な反応をしては、心が疲弊してしまいます。そのため、心は予期せぬ出来事に鈍感で、自分に直接影響のないことは正常の範囲と自動認識する仕組みがあるとされています。異常事態に遭遇したとき、身を守るのに大切なことは「平常」から「非常」に心を切り替える訓練をして備えることだといわれています。定期的に防災訓練などに参加し、心を切り替える備えをしようと思います。

献血者数が年々減少しています。このまま推移すると、輸血用血液製剤の安定供給に支障が出る恐れもあります。平成29年度の人口当たりの献血率は全国平均3.70%(徳島県3.41%)ですので、献血に協力をしてくれている人はほんの一部に限られています。多くの人は「自分が献血しなくても問題ないだろう」と思っているのではないかと想像されます。「正常性バイアス」が働いて、

「輸血が必要な患者さんが輸血を受けることができない」非常事態は起こらない

と、思い込みがあるのではないかと思われます。しかし、非常事態は自分の周りに起こるかもしれません。家族が、友達が、自分自身が巻き込まれるかもしれません。

「輸血を必要とする人が、顔の見えない誰かの善意によって助かる。」それが普通のこととして現在行われています。とてもすごいことだと思います。続けていかねばなりません。私たち血液センター職員は、一人でも多くの方が「正常性バイアス」の呪縛から解放されて献血に足を運んでくださるように、献血の啓発をこれまで以上に行ってまいります。
いつの日か、人工血液が実用化され献血がその役割を終えた時、「すごい時代だったんだね」「みんな優しかったんだね」と未来の人たちが振り返ってくれるかもしれません。その時まで、皆様のご協力をお願いいたします。

平成30年8月吉日
徳島県赤十字血液センター 所長 浦野 芳夫

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