【 クリスマス イン サマー 】
暑い日が続いた夏の日の午後のことです。所用で献血ルームアクティブGの待合室で人を待っていたら男性が入ってこられました。隣で受付スタッフとのやり取りを聞いていたら、どうも日本の方ではない様子。一人で初めての献血に来られたようです。会話は大丈夫ですが、読みは苦手のようで、スタッフが問診表を一項目ずつ読んで確認が始まりました。可、可、可と続きましたが、海外滞在歴で引っ掛かりました。4月にしばらく母国インドネシアに帰国しておられたとのこと。問診では海外滞在歴の基準がとても厳密です。
ご本人の帰国先は1か月以上滞在の場合献血不可となる地域です。二人のやり取りを聞きながら私は隣でドキドキしていました。そして確認できた帰国期間は約3週間。献血可でした。その後、健診医の診察と献血前のヘモグロビンチェックを経て、献血いただける運びとなりました。
ここで突然私の登場です。「ちょっとお話を伺ってもいいですか?」
何と言っても、私は、7月のコラムが書けないままに8月になり8月も怪しい状況です。この機会を逃すわけには行きません。
と言うことで、以下は、献血ベッド脇に張り付いてYさんにインタビューした内容です。
Yさんはインドネシアの出身の22歳です。岐阜市に近い某市の会社で働いておられます。インドネシアで献血したことはありません。今回献血しようと思い立たれたとの事です。会社の日本人の同僚にラブラッドのことを聞いて、アプリを登録、さらに献血の予約もして、この日、一人で電車を乗り継いで、献血ルームに来られました。
インドネシアにはご両親とお兄さんがおられます。日本には約4年前、新型コロナウイルスが広がる直前の2019年12月に来られました。コロナが落ち着いてきた最近になって、京都と大阪と東京に行ったとのこと。京都は赤い鳥居で外国人の人気ナンバー1の伏見稲荷、大阪はUSJ、東京は東京タワーとのことでした。
太い腕に初めての献血針が刺さる一瞬、目をきつく閉じましたが、その後は、看護師も加わりいろいろ質問する中で、採血は快調に進みあっという間に400ml、コラム掲載のご了解を得て私のインタビューも終了しました。
しかし、こうして文章にしてみると、杜撰なインタビューでした。東京での観光は東京タワーとのことでしたが、実はスカイツリーではなかったのか?
そしてなんと言っても肝心の、「今回献血しようと思い立った」理由を聞けていません。
さて、Yさんの自宅を確認するために地図(Googleマップ)をみてみたら、画像をあげた地図では小さすぎて島影は見えませんが、ご自宅のあるジャワ島の南にクリスマス島を見つけました。
海外の若者が思い立ち、アプリを登録、予約して一人で献血ルームのドアを開いてくれた。これが、私には(アクティブGにとっても)夏のクリスマスプレゼントでした。
本日は献血ありがとうございました。
5年間滞在の後、インドネシアへ帰られる予定とのこと、後1年と少しの日本、いい時間を過ごしてください。
岐阜県赤十字血液センター 所長 髙橋 健