【第60回献血運動推進全国大会 体験発表その1】
令和6年7月18日(木)に第60回献血運動推進全国大会が48年ぶりに岐阜市で開催されました。(1枚目の写真はまだ始まる前の準備中のステージです)
その概要はニュースに譲ることとして、
紀子さま 岐阜市で献血運動推進全国大会にご出席|NHK 東海のニュース
このコラムでは、6月に紹介した体験発表者のお一人、Tさん(写真左)のご了解をいただき、当日発表のお話の全文を掲載させていただきます。なお、8月は、Kさん(写真右)の体験発表を掲載の予定です。
ここに上げた写真は、2人の式典ステージでの発表が終わり、その後場所を移して発表内容などについて妃殿下から一人ずつお声がけをいただき、さらにその後に、たくさんのプレスに囲まれてインタビューを受けた後の、お役目すべて終了、半年前にスタートしたミッションコンプリート(!)の直後に、私も加わり撮った写真です。
二人とも、ちょうどこの日に発表となった梅雨明けと同じくらい晴れやかな表情です。
お疲れ様でした。ありがとうございました。
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Tさんの体験発表
タイトル 『当たり前の日常が愛おしい』
私には2人の娘がいます。今回、6年前の下の娘の病気のことをお話しさせていただきます。
ある日、毎日元気に走り回って、やんちゃだった1歳8ヶ月の娘が歩かなくなりました。食べなくなり、便秘になりました。そして、ある日曜日の朝、急に飲んでいた飲み物を吐き出し始めたのです。
休日外来を受診し、点滴などで治療していましたが、回復せず、3歳上の長女に、また点滴してもらってくるね、と留守番を頼んで病院を受診しました。
それが、慌ただしい日々の、始まりでした。
病院で頭のCTを撮ったところ、8cmの脳腫瘍が見つかり、即入院。手術が必要と言われました。しかし、すぐに手術ができる枠がなく、元気がなくなっていく娘を見守りながら手術を待つ数日間がとても長く感じました。
手術は10時間に及びました。「頭の手術は長い時間かかるよ」、「先生たちにお任せしようね」、一緒に付き添ってくれた看護師をしている母の言葉が頼りでした。
「先生も一生懸命だ。」「娘も頑張っている。」「きっと大丈夫。」心の中で自分に言い聞かせました。
手術が終わり、先生から、「出血が多く、800mlの輸血を使いました。体重10キロのお子さんにとっては、ほとんどすべての血液が入れ替わった量です。」と教えてもらいました。
ICUに入った娘は数日間意識が戻らない状態が続き、見守ることしかできませんでした。目を閉じたままの娘を見て「生きててくれてありがとう。とても頑張ったね」と、小さな手を握りほめてあげました。
意識が戻った時も娘の手足は真っ白で、そんな時、また輸血をしていただきました。
実は、娘が入院していた日々のことは、夢中で、良く覚えていないことが多いのですが、赤い赤血球のバッグから一滴、また一滴とゆっくりと流れる血液が娘に輸血されると、冷たくて真っ白だった娘の足の裏と指先がピンク色になり、ほかほかと温かくなるのを感じて、ホッとして涙がでたことはしっかりと覚えています。
1か月で娘は退院しました。しかし半年後に再発、その1年後、3歳の時にまた再発し手術を受けました。
つらい治療を何回も、本当に頑張ってくれました。
そして、今、最後の手術から5年たち、娘は小学2年生になりました。
病院の皆様に助けられ、そして、あの時いただいた輸血のおかげで、とても元気です。
娘は長女と仲良しですが、家ではケンカもよくします。止めに入るのですが、気づくと私もケンカに加わっていることも・・・。
でも、改めて思うと、こんな当たり前の日常をとても愛おしく感じます。
私は、娘にいただいた輸血と、病院で頑張っているたくさんの子供たちのことを思いながら、定期的に献血に行くようになり6年がたちました。
これからも1日1日を、普通に、けれど大切に積み重ねていけることを願っています。
本当にありがとうございました。
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ご家族がずっとお元気に過ごされることを願っています。
Tさん、ありがとうございました。
岐阜県赤十字血液センター 所長 髙橋 健