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所長コラム

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【献血セミナー】(附 全国大会体験発表その2)

  

 若年層の献血を増やすための方法として、献血セミナーがあります。私も時々行うのですが、なかなか難しいものです。

 大学でうまくできたと思っても、その大学の献血実績をみてみると、うーん、であったり。ところが若いスタッフが高校で献血セミナーをしてくると、その後、たくさんの高校生が献血ルームに来てくれたり。

うまい下手よりも、世代が近い遠いが関係しているのでは、と思ったりもします。

  

 今回、ある看護専門学校から献血セミナーの相談を受けました。私に、ということではなく、7月の全国大会で献血ボランティアの活動の体験発表をしてもらったKさんに話をしてもらいたいという依頼です。

KさんにOKをもらい、せっかくの機会なので、私がまず献血紹介のセミナーを行うことにしました。その後にKさんが、全国大会の再現、発表してくれました。写真はその時のものです。

  

 さて 、ここで、7月のコラムで8月と予告したKさんの発表全文を、遅ればせながら掲載させていただきます。

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タイトル 『祖父の思いをつないだ学生献血ボランティアの活動』

  

 岐阜県学生献血ボランティアとして活動してきました、6年間について発表させていただきます。

 6年前、私は高校1年生となり岐阜市内の高校に進学しました。中学の時、卓球部だったこともあり、高校でも続けたかったのですが、自宅が遠く、通学に片道1時間半かかる関係で部活動を断念しました。

  

 そんな1年の梅雨の頃、岐阜市に住む祖父が「部活の代わりに、月に1回、献血ボランティアをしてみたらどうや?」と声をかけてくれました。

  

 祖父は、ライオンズクラブで長い間活動しており、毎月第3日曜日には市内のショッピングモールで、学生献血ボランティアと一緒に献血バスの応援をしていました。

祖父の勧めを受け、参加することに決めました。

  

 主な活動としては、献血のパネルを持ってショッピングモールに訪れる人に呼び掛けを行います。素通りする人が多い中で、立ち止まり「どこでできるの?」、「初めてだけどできるかな」などと聞いてくれる方がいます。そんな方々をバスまで案内します。

  

 月に1回、あちこちの大学や高校から学生が集まります。仲良くなった仲間との活動が楽しく、とてもやりがいを感じました。

 祖父は、一人一人の学生を大事にして、気遣いながら、もくもくと仕事をしていました。

  

 そんな祖父は、私が高校2年生の秋にがんを患い手術を受けました。幸いなことに退院することができましたが、病気のことは一切言わず、また、いつものように学生と共に会場で献血バスの応援をする姿を見ました。しかし、私が高校3年生になった秋にがんが再発し、亡くなりました。ちょうど新型コロナウイルスの感染が蔓延していた時期と重なりお見舞いにも行けませんでした。

  

 学生ボランティアは、最初の頃は10人以上集まりましたが、毎年卒業して少なくなり、私が大学1年になった年には3人だけになりました。

それでも3人が集まり、ライオンズクラブの皆さんや赤十字奉仕団の皆さんに交じって献血の呼び掛けを続けました。

このような時でした。

  

 私が大学2年になった2022年に、「未来へつなぐ献血プロジェクトぎふ」が始まりました。県内の大学や高校に学生献血ボランティアの参加が呼び掛けられ、多くの学生が応えて現在、登録数300人以上になっています。そして日曜日のショッピングモールだけでなく、献血ルームでのサマーキャンペーンやクリスマスキャンペーンなど、あちこちで活動しています。

  

 活動の成果もあり、新しい献血ルームでの高校生の献血は徐々に増えています。その一方で、未だ20代、30代の献血者は少ないままです。

この改善には、これからの学生ボランティアみんなの活動が、一層重要です。

  

 祖父は、意志が固く決めたらやりきる人でした。だから30年以上にわたり、もくもくと献血の活動ができたのだと思います。

また祖父は、献血会場で私を特別扱いすることはありませんでした。でも、亡くなった後に祖母から、「4人の孫の中のただ一人の孫娘の〇〇(Kさん)が、毎月来ることを楽しみにしとったんやよ」と聞きました。

  

 祖父の背中を見てボランティアを始めた私も、来年の3月には卒業します。

まだ国家試験を控えていますが、看護師となって病院で働く予定です。

早く一人前になって、献血でいただいた血液を、安全に患者さんに届ける仕事ができることを夢見ています。

  

 最後になりますが、学生献血ボランティアは、毎年入会しても毎年卒業してメンバーが変わっていきます。本日ご参加の皆さまには、引き続き、学生献血ボランティアをご支援くださいますようお願いいたします。

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 後日、この学校に献血バスが伺ったのですが、たくさんの学生さんと先生方に献血していただきました。ありがとうございました。

  

 私が良かったのか、Kさんのお陰か、言わずもがなですが、一応両方ということにさせていただきます。

  

>岐阜県赤十字血液センター 所長 髙橋 健