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所長ごあいさつ

所長ごあいさつ(令和2年5月)

浦野所長は呟きたい

 新型コロナウイルス感染の拡大が止まりません。国や自治体は不要不急の外出の自粛や、密集・密閉・密接の3密を避けるよう呼びかけています。連休中、天気が良ければどこかへ出かけたいところですが、庭の草むしりでもするしかなさそうです。

あいまいな空に不満の五月かな(中澤敬子)

 新型コロナウイルスは、元々コウモリが持っていたウイルスのようです。これに限らず、人のウイルス感染症の多くは動物由来です。最近、SARS、MERS、新型インフルエンザなど次々と新しい感染症が出現していますが、根本的な原因は人間の営みにあると考えられています。開発のため無秩序な生態系への侵入や地球温暖化などで、生息域が縮小した野生動物が人間の生活圏に出没するようになり、野生動物と人間の接触機会が増えています。2014~2015年に大流行し世界を震撼させたエボラ出血熱は、アフリカ熱帯林の奥深くに棲むコウモリが起源とされています。

 人類はウイルス感染症の一つ、天然痘の根絶に成功しました。しかし、すべての感染症が根絶できるわけではありません。根絶のための条件は3つあります。①感染すれば必ず症状が現れ確実に診断できる②感染症を起こす病原体が人にしか感染しない③効果的なワクチンがある です。新型コロナウイルス感染症を含め多くの感染症はこれらの条件を満たさないため、根絶するのは非常に難しいと言わざるを得ません。

 それでも根絶、撲滅を目指すべきなのでしょうか。感染症の専門家であり感染症と人類の関係を研究してきた山本太郎長崎大学熱帯医学研究所教授は、撲滅ではなく共存を目指すべきだと言います。感染症は人類の間に広がるにつれ毒性が弱くなることを、歴史が教えてくれています。ウイルスにとって人間は大切な宿主です。宿主が死んでしまっては自分たちも生き延びることができません。ウイルスとしては、人間と共存するように変わらざるを得ないのです。

今、私たちにできることは徹底した新型コロナウイルスの感染防止策を行い、病気の広がる速度を遅くすることです。これは、患者の急な増加による医療崩壊を防ぎ、被害を最小限に抑えるために絶対必要なことです。またこれは、ウイルスが新しい宿主を見つけづらい状況にすることでもあります。宿主が少ない状況下では、宿主をあまり傷つけない弱毒のウイルスの方が宿主を殺してしまう強毒のウイルスより増殖に有利です。すなわち、集団全体での徹底した感染防止策をとることで、ウイルスの弱毒化への効果も期待できるのです。

 先の見通しがなかなか立ちません。社会が暗くなりがちです。こんな時、一人ひとりが希望を持つことが明るい社会につながると、山本先生は言います。明けない夜はありません。必ず陽は昇ります。

 

こんな状況下でも血液の病気、抗がん剤治療の副作用、事故、分娩時の大量出血などで多くの患者さんが輸血を必要としています。しかし、献血者の減少が続いています。

献血は医療体制維持に必要なため不要不急の外出には当たりません。皆様のご協力をお願いいたします。なお3密を避けるため、予約をしてお越しいただければ助かります。よろしくお願いいたします。

令和2年5月

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