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所長のつぶや記

所長ごあいさつ(令和2年6月)

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 鬱陶しい雨の季節が近づいてきました。新型コロナウイルス感染もまだまだ心配です。何かスカッとしたいものです。

梅雨入りや赤き靴はく老夫人(山内重子)

 今月10日は「時の記念日」です。1920年(大正9年)に文部省外郭団体「生活改善同盟会」が「時間を守り、欧米のように日常生活を合理的、効率的にしよう」と提唱し、東京天文台とともにこの記念日を制定しました。ちょうど100年前です。日本書紀によれば、天智天皇がはじめて時計(漏刻と呼ばれる水時計)を設置し、鐘や鼓で人々に時刻を知らせたのが天智天皇10年4月25日(西暦671年6月10日)であることから、この日が当てられました。

 時は刻々と刻まれますが、アインシュタインの一般相対性理論や特殊相対性理論によればその速度は一定ではなく、時間は重力が小さいほど速く進み、速く動いているものほどゆっくりと進みます。時速200㎞で進む新幹線の時計は、駅のホームで静止している時計より1秒あたり100兆分の2秒ほど遅れ、エベレスト山頂に置かれた時計は、海抜0メートルの時計より100年あたり300分の1秒速く進みます。重力の影響をほとんど受けないGPS衛星の時計は、相対性理論による時間の'ずれ'を補正しないと使い物にならないといいます。

 1967年から、1秒はセシウム原子が吸収・放出する電波が91億9263万1770回振動するのにかかる時間と定義され(何のことやら分かりません!)、国際基準にはセシウム原子時計が使用されています。非常に正確で10-15秒の精度です。2つのセシウム原子時計があるとすれば、両者は秒の小数点以下15桁まで同じ時を示します。2つの時計が1秒ずれるには、3000万年かかります。

 これでもう十分だと素人には思えるのですが、香取秀俊東京大学教授は1000倍精度の高い時計の理論を2001年に発表し、2014年にそれを実現しました。ストロンチウム原子を使った光格子時計です。(原理は解説を読んでも理解できませんでした。)10-18秒の精度で、1秒ずれるのに100億年かかります。

 これまでの光格子時計は大きくて移動させることができませんでしたが、香取教授らの研究チームは可搬できる光格子時計を開発し、その精度を東京スカイツリーで検証しました。地上と展望台に可搬型光格子時計を設置して時間を計測したところ、展望台の時計の方が1日あたり4.3×10-9秒速く進んでいることが分かりました。この時間のずれから、一般相対性理論を基にした計算で地上と展望台は452.603メートル(不確かさ39ミリ)の高低差であると求められました。一方、レーザーを使って高低差を測ると452.597メートル(不確かさ13ミリ)でした。両者は高精度で一致し、可搬型光格子時計の精度が実証されということです。この成果は4月6日付英科学雑誌「Nature Photonics」に発表されています。

 10-18秒の精度があれば、理論的には1㎝の高低差や人が歩く程度の速さで動く物体の時間の'ずれ'をとらえることも可能だということです。今回の成功で、近い未来海底や山に設置して、局所的な重力の変化による時間の変化を観測し、地殻変動を詳細に分析できる時がくるのではないかと期待が高まっています。

 これに限らず最近の科学技術の進歩は目覚ましいものです。コロナ後の世界はオンライン化が普通になり、医療や介護の世界でもロボット看護師、ロボット介護士が当たり前の社会がくるに違いありません。しかし、どれほどIT(情報技術)やAI(人工知能)が進歩しようとも、医療の原点は「手当て」することだと思います。医療者は患者さんに手の温もりを伝えて欲しいものです。

 貧血の患者さんが輸血を受けると、見る見るうちに顔色が良くなり手足が温かくなり、生気がもどってきます。患者さんは皆、献血者の温かさ、やさしさを感じるといいます。でも今、新型コロナウイルス感染の影響で献血者が減少しています。皆様のご協力をお願いいたします。

令和2年6月

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