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所長コラム

所長コラム(令和2年6月)

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飛騨、奥美濃

 以前、東京にいた頃、岐阜から来ましたと言うと、関西ですか?などと聞かれたものでした。関東以北の人は岐阜のことはあまりご存じありませんでした。しかし高山と郡上八幡はほとんどの人が知っていました。飛騨・高山、奥美濃・郡上八幡には、視線を少し斜めに上げてしばらくぼーっと遠くを見ていたくさせる響きがあります。

 さて、献血の話です。都道府県面積順位で、北海道は別格ですが、岐阜県は全国7位と広い県です。そのうちで飛騨(高山市、飛騨市、下呂市、白川村)、奥美濃(郡上市)は北部に位置し県面積の49%を占めています。しかし人口は岐阜県全体の9.2%、約18万人です。ちなみにこの面積は27位の愛知県とほぼ同じ面積です。人口は決して多いとは言えない地域ですが、ありがたいことに献血に非常にご協力いただいており、血液センターのある岐阜市から高山市まで高速道路で2時間くらいかかりますが、しばしば献血バスが向かいます。

 6月になりコロナウイルスもやや落ち着きをみせている状況において、私も訪問させていただきました。まず高山市では飛騨保健所、高山市役所、そして献血バス会場となった高山警察署にお伺いしました。現場で血液センタースタッフと共に調整役を務めていただく地元の皆様の姿を目の当りにすると、献血は様々のご協力があってはじめて成り立つ事業であることを改めて実感しました。

 高山祭は春だけでなく秋も中止になりました。全国どこもとは思いますが、コロナウイルスは飛騨、奥美濃にも大きな影響をもたらしています。高山市を後にさらに北上して飛騨市役所を訪問しました。町はきれいで、一人で味わうにはもったいないくらいの青空の下、アニメ映画で有名になった飛騨古川駅は人影なくたたずんでいました。そこから帰路です。飛騨清見から高速道路に乗り一気に南下します。高鷲、白鳥、大和、郡上八幡、奥美濃の町々が点在しています。有名な郡上踊りも、また、通に人気の白鳥踊りも中止です。2つの踊りの違いをご存じですか? テンポが郡上踊りはゆったりで、白鳥踊りは速いのです、など知った風に書きましたが、実は踊りのことを語る資格は私にはありません。以前講演で行った秋田で、夜の懇親会でドンパン節が始まりました。私も誘われて輪に加わり、一生懸命真似て手足を動かしたのですが、「顔が笑ってないよ」と、最大の欠点を一瞬に指摘されたのでした。ゆったりでも速くても、上手くても下手でも楽しむことが一番だったのです。

 実はこのように色々思い浮かぶのは、センタースタッフの運転の後部座席に一人座って車窓を眺めているからです。白い車体に赤十字マークの車は安全運転で進みます。そうこうするうちに車は美濃市を過ぎて関市、各務原市、岐阜市へ、左右に山が迫っていた景色が平野に変わりました。

 思い出しついでにもう一つ。まだ高速道路が十分整備されていなかった30年程前、血液内科を始めた頃の話です。今では慢性骨髄性白血病は殆どが内服でコントロールできる病気になりました。しかし当時は、発症後数年で生命の問題に至る厄介な病気でした。勤めていた岐阜市の病院に高鷲村や郡上八幡から紹介で患者さんが来られ、まず入院、その後通院いただきました。朝早く起きて高速バスで来られているとのことでした。通院毎に四季の変化を教えていただくことが楽しみでしたが、残念ながらずっとは叶いませんでした。また、ご本人は岐阜市だけれどご両親が河合村(現在の飛騨市)にお住まいで、急遽の電話に駆けつけていただいたことも何度かありました。皆さん何時間掛けて来ていただいたのでしょうか。

 その頃に比べれば今は高速で2時間、しかし近くなったとは言ってもやはり遠い奥美濃・飛騨に献血バスが向かいます。若い時にはそこまで思いませんでしたが岐阜県は良いところです。センタースタッフには迷惑かもしれませんが献血バスの行くところ私もあちこち回りたいと思っています。そして、仕事以外でも飛騨、奥美濃に行きたいものです。前より少し年を重ねたので、下手でも「笑って」踊れるようになっているかも(?)と期待します。是非とも近い夏に試せることを願います。

  

岐阜県赤十字血液センター

所長 髙橋 健

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