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所長コラム

所長コラム(令和3年4月)

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供給の話
  

 岐阜県赤十字血液センターでは献血のご協力をお願いするとともに、血液製剤を病院に届ける仕事をしています。今回はこの紹介です。

 岐阜市茜部の血液センター(岐阜センター)からは定時便として午前10時と午後2時に県南部(美濃地方)および愛知県の一部(一宮江南地区)の各医療機関に向けて通常7台の献血運搬車が出発します(*1)。出発前のセンターの供給作業室では、各ルートの運搬担当スタッフが発注票に従って血液製剤(赤血球、血小板、血漿)を輸送容器に梱包していきます。しかしこの途中にも、各病院からは、その日の患者さんの状態に基づいて新たな注文がFAXやWeb(*2)でどんどん入ってきており、供給課事務室と作業室の間では「〇〇病院、赤血球、A型、6単位追加」などの声が飛び交います。ぎりぎりまで追加や調整が行われ、完了した順に駐車場に並んだ運搬車に血液が運び込まれ、各方面に出発します。各々のルートは、距離の遠近や搬送先病院数にもよりますが、2時間程度でセンターに戻るように設定されています。

 面積の広い岐阜県では岐阜センターから県北部(飛騨地方)の病院へ直接供給することはできません。このため高山市に供給出張所を置いています。ここから午前、午後各1~2便の運搬を行っています。

 また、病院への供給とは別に、岐阜センターと高山供給出張所の間では、赤血球の在庫調整や有効期限が短い血小板を届けるために、製剤の移送を行います。高山のスタッフが岐阜まで来ることもありますが、多くは中間地点で合流し製剤の交換を行います。我々はこれを「中継」と呼んでおり、郡上八幡あたりで行うことが多いようです。写真は昨年秋の様子です。気候の良い時期で、(ドライバーは迷惑だったかもしれませんが)同乗していた私は快適でした。

 しかし、いい天気ばかりでもありません。思い起こせば豪雨が続いた昨年7月、「中継」で使用する東海北陸自動車道は通行止め、国道も土砂崩れで通行止めとなりました。この時、高山からは、患者さん指定で白血球の型も合わせた血小板(HLA血小板)の依頼を受けていました。

 さてどうするか。皆様、中部地方の地図を思い浮かべてください。北陸自動車道がある(!)という訳で、1台は血小板を積んで岐阜を出発。名神高速道路を西に向かい滋賀県米原へ、そこから北陸自動車道を北上し福井県へ。もう1台は高山から東海北陸自動車道を、いつもとは逆に北上し富山県に抜け、北陸自動車道を日本海に沿って南下しました。2台は石川県の加賀温泉で合流し、血小板を受け渡してUターン、各々が約4時間の行程で無事高山の患者さんに血小板が届けられました。

 この時お世話になった北陸自動車道ですが、この冬には豪雪で多くの車が立ち往生しました。普段、道路は通れて当たり前、電気は点いて当たり前、水道は水が出て当たり前と思っていますが、昼夜を問わず続けられる北陸自動車道の復旧作業のニュースをみると、生活インフラを保つために多くの人々が役割を果たしていることに気づきます。また、我々が従事する血液事業も、医療における基盤インフラであることを再認識します。

 さて、そこでこの基盤インフラを保つスタッフを励まそうと思いつき、午前9時半頃に供給準備室を訪れると、意に反して、慌ただしく働くスタッフからは相手にされないか、あるいは冷たい視線を浴びる結果となります。所長の立場としては少し寂しいですが、しかし、発注票を確認し、その1本の血液を、間違いなく病院へ、そして患者さんへ届ける意気込みを感じて、少し嬉しかったりもします。

*1:血液センターからは定時便以外に、病院の要請に応じて緊急時にはサイレンを鳴らして緊急配送を行います。また、状況により定時外配送を行う場合もあります。

*2:従来はFAXでの発注方法が中心でしたが、現在赤十字血液センターではWeb発注への切り替えを進めています。

  

岐阜県赤十字血液センター

所長 髙橋 健

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