

【台風一過】献血した血液はどのように運ばれるか
6月はじめの、台風があちこちに豪雨を降らせながら太平洋沿岸を西から東に移動していた頃の話です。私は献血バスに乗って雨を避けるように北の高山市へ向かいました。日本列島の地図をみていただくと分かりますが、内陸の高山市は太平洋側か日本海側か、どちらが近いかと言えば日本海側で、昔から新鮮な魚が富山から入って来た土地です。
さて、この日バスが北に向かったのは台風を避けた訳ではなく、前から決まっていた2泊3日の高山での献血のためです。私は1日目と2日目に健診医を担当しました。
さて、ここで質問です。
この3日間、バスとスタッフは高山で宿泊しますが、この間に献血でいただいた血液はどうするでしょうか?
学生さんなどに質問をすると、冷やしてバスに保存する、凍らせて保存するなど、色々な答えをしてくれますが、ヒントは上に挙げた写真です。
台風の影響で午前中は雨の献血だったのですが、この写真は雨が上がった昼頃の献血バスの様子です。
答えは、「血液は専門の配送業者が、午前中の献血分と午後の献血分を、1日2回血液センターに運ぶ」です。写真は午前分を献血バスから受け取っている様子です。
この後、血液は東海北陸自動車道を2時間南下し、岐阜市茜部の血液センターに届けられました。
このように、県内各地や献血ルームでいただいた血液は、一旦、岐阜センターに集められます。その後に1日3回の定期配送便に載せて、愛知県瀬戸市にある東海北陸ブロック血液センターに運ばれます。
東海北陸ブロック血液センターには、岐阜県とともに、愛知県、静岡県、三重県、そして福井県からの献血血液が集められ、クリーンルームの中で赤血球製剤などの輸血用血液製剤が順次製造されていきます。
献血から製造までは一定時間内に完了することが定められていて、時間を超えた場合は患者さんに使用できません。
このため血液事業に係わるすべてのスタッフは、いただいた献血が患者さんに届くまで、血液のタスキを淡々と、しかし確実に繋ぐことに務めています。
さて、高山に話を戻します。
高山市はとても広い市です。平成の大合併(平成17年)で、近隣の、丹生川(にゅうかわ)村、清見村、荘川村、宮村、久々野町、朝日村、高根村、国府町、上宝(かみたから)村の7村2町と合併し、日本一広い市となりました。面積は東京都とほぼ同じ広さです。
大合併の前は9つの町村各々にバスが行っていましたが、近年伺うのはその中の一部だけです。健診医として参加したこの日の午後、バスは、奥飛騨に通じる県道89号線沿いの、かつては丹生川村と呼ばれていた地に会場を移していました。
人口は決して多いところではありませんが、献血バスの健診医席から外を眺めていると、時々、駐車場に車が止まります。降りた人の行先を見ていると、彼方へ向かう方がいる一方で、迷う様子もなくバス横に設営した献血受付に進んで来られる男性あるいは女性がいます。
机の上で数字だけ見ていては分からないことがあります。現場で初めて分かることがあります。
台風一過の広がり始めた午後の青空を見ながら、献血は様々な場所の色々な人の思いに支えられていることを改めて実感し、血液センター7年目の気持ちを新たにしました。
岐阜県赤十字血液センター 所長 髙橋 健



