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所長コラム

所長コラム(令和4年7月)

< 手紙 >

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 7月半ばに、以前勤めていた病院の患者さんKさんから血液センター宛に手紙をいただきました。私が直接担当した患者さんではないのですが、当時、私が診療科の最年長であったことからご連絡をいただいたものです。

Kさんは5年半前に白血病を発症し、骨髄移植を受けられた患者さんです。経過中に様々の合併症を発症されました。その合併症についての主治医の説明を手紙から引用してみますと、『たまにある』、『まれにある』、『典型的なものと違う』、『あまり見ない』、『論文でみたことがある』、というようなものが次々と起こったとのことです。骨髄移植だけでも大変な治療なのですが、その移植後にさらに辛い数年間を過ごされてきたことが想像されます。そして、内服薬は続いているけれど、体調はかなり落ち着いて移植後5年を迎えられたことのご報告を、今回、笑顔の写真に『お祝いはノンアルコールビール』のコメントを添えていただきました。 

手紙を読みながら当時を振り返ると、血液内科全員が参加する患者さんの検討会で、Kさんの治療について、毎週、主治医がとても頭を悩ませていたことを思い出しました。皆が色々な意見を出すのですが、最後に決めるのは患者さんのことを一番知っている主治医でした。そしてご本人が主治医と共に一つ一つの合併症を克服され、今に至られたことに敬服いたします。

 さて、Kさんのことをコラムに取り上げさせていただいたのは、手紙の中で献血についてご伝言をいただいたからです。Kさんは学生時代には東北地方で、就職後は東京でと、よく献血されていたとのことです。しかし今回の一連の治療において(以下、引用させていただきます)

『それと同じかそれ以上の量の輸血をいただきました。また、献血由来の免疫グロブリン製剤もたくさんいただきました。献血にご協力の方々、そしてスタッフの皆様には大変お世話になりましたので、よろしくお伝えいただければと思います。』

 血液センターの仕事の基本は、中心に患者さんがいて、その人に血液を届けるために献血いただくことです。

 その昔の輸血は、手術の時に病院に家族や友人に来てもらい、その場で採血して患者さんに輸血するなど行われていたと聞きます。今から考えると、安全性にとても問題がありますが、献血者と患者がとても近い輸血です。現在の輸血は、様々の変遷を経て、安全が当たり前と思われるほど安全性を高めた医療となっています。しかし、この変遷の間に、献血者と患者の距離は、お互いが見えにくい、遠いものになっているようにも思います。また、我々血液センタースタッフにとっても輸血を受ける患者さんその人は見えにくい状況となっています。

 このような中で、基本を忘れないためにも、Kさんからいただいた言葉は大事で励みになります。センタースタッフの目に留まることを期待してここに上げさせていただきました。

 Kさんの手紙をここに上げたもう一つの(本当の?)理由は、バタバタしてまだ返事を出しそびれていることと、7月のコラムの締め切りが重なっていることです。Kさんは、コラム『いつも拝見しております』と書いておられましたので、一石二鳥ではないですが、読んでいただけることを期待してこの場でお礼させていただきます。

 嬉しいご連絡をいただきありがとうございました。また、これからも、是非、献血者の皆様や我々に向けてメッセージをいただければ幸いです。

 Kさん、ならびに皆様、暑い夏ご自愛くださいますようお祈り申し上げます。


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