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所長コラム

所長コラム(令和2年11月)

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白川村の献血
 

 高度急性期医療という医療区分があります。血液内科で言えば、例えば骨髄移植などが相当します。より良い治療結果を目指して、適応のある患者さんにご本人の同意のもと積極的に治療を行います。危険も伴う治療であり遂行のためには最善を目指す担当医の強い気持ちが重要です。しかし、気持ちだけでは不十分で、研鑽を積んだ医師とそれを支えるスタッフの経験を積んだチーム体制のもとで初めて安全な実施が可能となります。この時の医療者の心持は、『果敢に、しかし淡々と』と言うところでしょうか。

 これに対して血液センターの仕事は、献血ドナーの安全に十分注意して血液をいただき、安全性の高い輸血用製剤として必要な病院、患者さんへ届けること、この地道な活動の繰り返しです。心持は言ってみれば、『淡々と、淡々と』です。

 さて、この安定供給を維持するために献血バスは岐阜県中を回ります。今回は、岐阜県の北端西部に位置する世界遺産の合掌造り白川郷で知られる白川村に向かいました。

 我々スタッフを乗せた献血バスは朝、岐阜市を出発し高速道路を北上しました。途中の荘川インターで高速を降り、そこからは紅葉真っ盛りの山々の間、カーブが続く国道41号線を縫うように北上し、昼前にやっと白川村に到着しました。

 村の人口は約1500人、まず南部の文化会館を会場として正午から午後2時まで献血を行いました。紅葉の山並みのさらに遠くには白くなった山頂を望む中、会館スタッフの方や、仕事の合間に車で駆けつけられた皆様に献血していただきました。

 次に白川村役場に移動し午後3時から行いました。ここでも、役場職員の皆様や、近隣の職場の方々にご協力いただきました。そして午後5時、終了の頃にはバスは山間の夕やみに包まれつつありました。

 役場玄関をお借りした受付では、献血を終わられた男性が座ってスタッフの説明を受けられ、その脇で小さな女の子と女性が見守っていました。実はこの3人は、娘さんを交代でお世話しながらご夫妻とも献血いただいたご家族でした。お話を伺うと、静岡のご実家の御父上が病院で何回も輸血を受けておられ、バスが来ることを知って感謝の思いで献血に駆けつけていただいたとのことでした。

 私からも献血のお礼をお伝えし、「今日いただいた血液は、今晩中に愛知県瀬戸市にある東海北陸ブロック血液センターに届けられ輸血用製剤となること。岐阜県で採血した血液は、基本は岐阜県に戻り使用されるが、静岡県は同じブロックに属しているので、不足などの場合は融通しあうこと。もしかしたらこの血液が御父上に届けられることもありうること(注)。」をお話ししました。

 冬の近づきを感じさせる夕暮れの中で、皆様にご協力いただいた白川村の献血は終了しました。そして4月から毎月、2泊3日(あるいは1泊2日)で高山市、飛騨市、下呂市、白川村とあちこち回った飛騨地方の献血バスもまた、今月11月を区切りとして、雪解けの春まで一旦終了となります。

 でも、大丈夫です。静岡の御父上にはブロックを同じくする静岡県赤十字血液センターが血液を届けてくれます。岐阜県赤十字血液センターの冬は、岐阜市の2か所の献血ルームとともに、献血バスが岐阜、西濃、中濃、東濃の美濃地方各地をめぐります。全国では各都道府県の赤十字血液センターが各々に必要な血液を確保すべく仕事をしています。

 1年の中で冬季は毎年献血が少なくなる時期です。特に今年は新型コロナウイルスの影響も続いています。しかし、献血にご参加いただける皆様にご協力をお願いしながら、必ず必要な患者さんに血液を届けます。

 それが仕事です。

 『淡々と、淡々と..... しかし少しだけ果敢に...!』

 

 

(注):ただし、医学的理由で血縁者の血液はタイプが似すぎているために危険な副作用(輸血後GVHD:詳細略)を起こすことがあり、血縁者間の輸血は原則として行われません。なお、輸血後GVHDを起こさないために、現在、ほとんどの赤血球と血小板の輸血製剤は放射線照射を行い安全性を高めて供給されています。

 

★白川村の献血の写真は「岐阜県赤十字血液センター公式インスタグラム」でもご覧いただけます。

  

岐阜県赤十字血液センター

所長 髙橋 健

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