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所長コラム

所長コラム(令和5年5月)

【 HLA適合血小板の話 】

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ある日のお昼前の出来事です。血液センターの血液製剤担当スタッフが私のところにやって来ました。

「所長がHLA適合血小板のドナー候補にリストアップされたのですが来週の献血お願いできますか?」という相談でした。

と言うことで、今回はHLA適合血小板の話です。ちょっとややこしいですがお付き合いください。

  まず血液製剤にどんな種類があるかから始めます。大きく分けて、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤の3つがあります。


以前は、献血した血液すべてを輸血する全血輸血が行われていましたが、現在は、必要な成分のみを輸血する方法が一般的です。病院で行われている赤いバッグの輸血は、全血輸血ではなく、献血された400ml(あるいは200ml)の全血から赤血球の部分を濃縮した赤血球製剤です。赤血球を除いた残りの黄色い液体の部分は血漿製剤として別に利用されます。この血漿製剤については、献血ルームで成分献血としても採血させていただいています。


そして、もう一つが血小板製剤です。血小板は出血を止めるために必要な成分で、白血病など血小板を作れず出血を起こす病気の患者さんに輸血されます。血小板は成分献血でしか献血いただけません。献血後の有効期限は4日間です。また患者さんに輸血しても数日で壊れてしまいます。 このため必要とする患者さんへは何回も輸血が行われます。多くの患者さんに安定して血小板を届けるためには多くの皆様に日々献血いただくことが必要となります。

さて、このような血小板なのですが、その中の特殊な製剤としてHLA適合血小板があります。赤血球にA型B型などの血液型があることはご存じかと思いますが、白血球にも血液型があります。この白血球の血液型がHLAです。



輸血を行う場合、赤血球の血液型は合わせますが、通常白血球の血液型HLAは合わせません。それでも一般には問題は起こりません。 しかし、白血病などで何回も何回も血小板輸血を行った患者さんでは、このHLAに対する抗体ができてしまい、通常の血小板輸血では血小板が壊されて上昇しなくなる場合があります。 このような時に使用されるのがHLA適合血小板です。HLAを合わせることにより、破壊を免れて血小板の上昇がみられるようになります。


  このHLA適合血小板については、白血病で亡くなられた患者さん(山口雄也さん)が献血を呼び掛ける動画の中に上げておられます。(https://www.youtube.com/watch?v=S5hqd6M3Q5A

血液センターではこの動画を学生実習に使わせていただいています。皆様にもご覧いただければ幸いです。


 話を最初に戻します。「来週の献血お願いできますか?」と聞かれて、イヤという訳にはいきません。と言うか、少し嬉しいくらいでした。普段の献血は血液がどなたに届くか分からないのですが、今回は、確実にどこかで私の血液を待っている人がいます。


ウエストを気にして昼食を少なくするのはしばらく中止です。献血の予定日に向けてしっかりと食べます。頬を噛んで口内炎など作らないように慌てず食べます。睡眠は十分とります。万が一にも事故にあってケガなどしないように注意します。


あとは、採血日にこのやや細めの血管が温かくなった気候の中で十分膨らんでくれることを祈るのみです。

 

  岐阜県赤十字血液センター所長 高橋 健



★写真は血液が供給車に積まれセンターを出発する様子です。


実は、採血できただけでは患者さんにHLA適合血小板は届きません。

献血された血液は一旦、東海北陸ブロック血液センター(愛知県瀬戸市)に運ばれ、品質と量のチェックを経てOKであれば初めてHLA適合血小板として製剤化されます。

そしてこの製剤は再び岐阜県赤十字血液センターに移送され、病院の依頼日に合わせて供給車で患者さんのもとへ届けられます。

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