赤血球にはA型、B型、AB型、O型などの血液型があり、輸血の際には血液型を一致させないといけません。同様に白血球をはじめとする全身の細胞にはヒト白血球抗原(HLA:Human Leukocyte Antigen)と言われる型があり、移植には患者さんとドナーさんのHLA型の一致する割合が関係してきます。
造血幹細胞移植ではHLA型のA座、B座、C座、DR座という4座(8抗原)の一致する割合が重要だとされています。HLA型は両親から各座半分ずつを遺伝的に受け継ぐため、兄弟姉妹の間ではHLA型が完全にあったドナーが4分の1の確率で見つかりますが、多くの患者さんは家族内にHLA型が適合するドナーを持っていません。 また、非血縁者間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しません。
1.座(locus:遺伝子座)
遺伝子座(いでんしざ)とは染色体やゲノムにおける遺伝子の位置(領域)をいいます。HLAの場合は、第6染色体の短腕に存在するMHC領域に数多くのHLA遺伝子座が存在しており、造血および臓器の移植時にHLA検査を行っているHLA-A, B, DR座には多くのHLAタイプが確認されています。
2.アリル(allele:対立遺伝子)
対立遺伝子(たいりついでんし)とは、相同な遺伝子座を占める遺伝子に複数の種類がある場合の個々の遺伝子のことを意味します。
ヒトをはじめ2倍体の生物は、それぞれの遺伝子座には父母に由来する2つの対立遺伝子を持っています。HLA-A遺伝子座の場合、HLA-A2抗原に相関する対立遺伝子として、HLA-A*02:01、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07等数多くの対立遺伝子が存在しており、骨髄移植では、これら対立遺伝子の異同が移植成績に影響を及ぼしています。
3.アリルに付記している接尾語
アリル名の末尾に表1のような接尾語がつく場合があります。
表1 アリルに付記する接尾語
例 | 意味 |
HLA-A*24:09N |
遺伝子は存在するが、HLA分子が完全な状態で合成することができないアリル。Nullの頭文字である「N」を付記する。 |
HLA-A*30:14L |
細胞表面のHLA分子が著しく少ないアリル。Lowの頭文字である「L」を付記する。 |
HLA-A*44:02:01:02S |
発現しているHLA分子が可溶性の分泌分子として存在している。Secretedの頭文字である「S」を付記する。 |
HLA-A*32:11Q |
細胞表面にHLA分子が発現されているか明確でない。Questionableの頭文字「Q」を付記する。 |
その他にC(Cytoplasm)とA(Aberrant)が接尾語として提唱されており、「C」は細胞質内にアリル産物が存在することを示し、「A」はタンパク質が表現されるかどうか疑問があることを示しています。2010年4月の時点で「C」と「A」が付記されたアリルは存在していません。
4.DNA型
骨髄ドナー及びさい帯血は、登録時のHLA検査として蛍光ビーズ法(PCR-rSSO法)によるDNAタイピングを行っています。この方法では、特定のアリルを決定することが出来ず、HLA-A*31:01/31:02等のような、複数のHLAアリルの可能性がある検査結果になります(表2:「蛍光ビーズ法(PCR-rSSO法)での検査結果と各結果表記法」を参照)。
5.アリルコード(表2参照)
蛍光ビーズ法(PCR-rSSO法)またはSBT法で行ったDNAタイピングの結果で、1つのアリルを特定できない場合、アメリカ骨髄バンク(NMDP)で使用しているアリルコード体系を用いて結果を表示します。
6.参考アリル(表2参照)
HLAタイピング結果で複数のアリルの可能性がある場合、最も可能性が高いアリルを意味します。
7.検索用抗原
適合検索で使用する「検索用抗原」(PDF:3.9MB)
表2 蛍光ビーズ法(PCR-rSSO法)での検査結果と各結果表記法
結果表記法 |
HLA-A |
HLA-B |
HLA-DRB1 |
検査結果 |
A*31:01/31:02 |
B*15:27/15:32/15:85 |
DRB1*11:01/11:04/11:05/11:06 |
アリルコード(NMDP) |
A*31:AB |
B*15:BFHB |
DRB1*11:EU |
参考アリル |
A*31:01 |
B*15:27 |
DRB1*11:01 |
検索用抗原 |
A31 |
B62 |
DR11 |