
兄が血液センターで働いてるのは知ってた。 「今日もたくさんの人が来てくれたよ」って、嬉しそうに話す兄の顔も見てきた。
でも、正直なところ、どこか遠い国の話みたいで、あんまりピンと来てなかった。
あの日までは。
父が病気になって、入院した。 先生から「輸血が必要です」って言われたとき、頭が真っ白になった。
父が、輸血。
あの時の病室のことは、今でも鮮明に覚えてる。
輸血が始まって、しばらく経った頃。 父の顔色が、みるみるうちに良くなっていくのが分かった。
目を開けて、私の顔を見て、「おう」って、いつものように笑ってくれた。
その瞬間、言葉にならない気持ちでいっぱいになった。
「あぁ、命が戻ってきたんだ」
心から思った。
病室の片隅で、いつもは血液を届ける立場の兄が、何も言わずにただ立ってた。
その背中を見ながら、私の胸の中にも何かが溢れてきた。
今、父の体の中を流れてるこの血液は、顔も知らない誰かが、自分の大切な時間と体を差し出してくれたものなんだ。
そう思った瞬間、涙が止まらなかった。
兄が仕事で言ってた「感謝」とか「命の重み」とか、言葉じゃ足りない。
もっともっと、深くて、大きなものを、肌で感じた瞬間だった。
あの日、父を助けてくれた人へ。 そして、今もどこかで誰かのために腕を差し出してくれている人へ。
職員の妹としてじゃなくて、一人の家族として、心から伝えたい。
本当に、本当に、ありがとうございました。
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