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血液用語集

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A

ABO血液型(ABO blood group)

1900年にランドシュタイナーによって発見された赤血球抗原。A、B、AB、O型の4群に分類されます。A型赤血球はA抗原、B型赤血球はB抗原、AB型赤血球はA、B抗原の両方を持っていて、O型赤血球はA、B抗原の両方を持っていません。

AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome)

エイズとは、後天性免疫不完全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)のことであり、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immune Deficiency Virus:HIV)の感染により免疫系が破壊されていくために、通常では感染しても問題にならないような細菌やウイルスによって重篤な症状を表したり(日和見感染)、悪性腫瘍が発生し、死に至る病気です。HIVはレトロウイルスに属し、熱に弱く、感染力も低いウイルスです。HIV感染者は無症候性キャリア、エイズ関連症候群を経て、エイズ患者となります。発病までの期間は、数ヶ月から10年以上と幅がありますが、発病後の死亡率は極めて高く、完全な治療法は確立されていません。HIVの感染経路は、血液を介するもの(麻薬の注射針の共用など)、性行為を介するもの、母子感染などがあり、通常の社会生活で他人に感染することはありません。

ALT(alanine aminotransferase)

肝臓に最も多く含まれる酵素。肝細胞が破壊されると血液中に流れ出すので、急性肝炎で最も強く上昇し、慢性肝炎や脂肪肝(肥満)などでも上昇します。激しい運動の後に一過性の上昇がみられることがあります。

AST(asparate aminotransferase)

心臓や肝臓に多く含まれ、骨格筋、腎臓、血液にも認められる酵素。心筋梗塞や急性肝炎、アルコール性肝障害などで上昇します。その他運動の後に一過性の上昇がみられることがあります。

ATL(adult T-cell leukemia)

ATLとは、成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia)のことで、HTLV-1(Human T-lym-photropic Virus 1)というレトロウイルスが原因となり、リンパ球の一種であるT細胞が癌化する病気です。

B

B型肝炎(hepatitis B)

型肝炎ウイルスの感染により発症する肝炎のこと。
感染経路は、主として血液や血漿製剤の輸注などによる非経口感染です。輸血以外の感染としては、母児間の垂直感染、夫婦間の水平感染などや、HBウイルスに汚染された注射針を刺すことによる経皮的な事故感染があります。また、HBウイルス感染には、一過性の感染と持続感染があります。

B細胞(bone-marrow derived cell)

リンパ球のひとつ。骨髄由来細胞、Bリンパ球ともいいます。
骨髄でつくられ、胸腺を経ず、直接リンパ系組織へやってきて分化した細胞をB細胞といい、抗体産生細胞です。

C

C型肝炎(hepatitis C)

従来、非A非B型肝炎といわれたものの多くを占める肝炎。C型肝炎ウイルスによって起こるものです。

CJD(Creutzfeldt Jakob Disease)

クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt Jakob Disease:CJD)は、稀に見られる中枢神経系の致死的疾患です。CJDの症例の多くは弧発性で、その感染および発症機序は不明です。

CMV(cytomegalo virus)

CMV(サイトメガロウイルス)は、ヘルペスウイルス群に属するウイルスです。献血できる年齢での感染率は80~90%であり、一般的には潜伏感染です。まだ感染していない人や免疫能の低下している人にCMVを含んだ血液が輸血された場合などに感染発症します。また、すでに感染している人でも免疫不全状態になるとCMVを含む血液の輸血でCMVが再活性化されて発症しやすくなります。

D

DNA(deoxyribonucleic acid)

デオキシリボ核酸のこと。遺伝子の本体や多くのウイルスの重要成分で、遺伝情報を保持し、発現させる役割を担っています。

G

GVHD(Graft Versus Host Disease)

GVHD(Graft Versus Host Disease:移植片対宿主病)とは、輸血した血液の細胞(移植片)が患者さん(宿主)の体内で生着・増殖し、その細胞が患者さんの細胞を「異物」として攻撃、傷害する病気です。このGVHDの原因となるのは、輸血された血液の細胞(移植片)に含まれる細胞障害性Tリンパ球であり、GVHDを予防するために、輸血用血液に放射線を照射しリンパ球の増殖能を壊してから輸血することが有効です。

H

HBV(hepatitis B virus:B型肝炎ウイルス)

径42mmの球状で外被をもつ、DNA型のウイルス。外被と芯から構成され、芯には二重構造をもつDNAとDNAポリメラーゼが存在し、芯に由来する抗原としては、HBc抗原、HBe抗原があります。芯をつつむ外被に由来する抗原としてはHBs抗原があり、これはかつてオーストラリア抗原と呼ばれていました。
HBウイルスはディーン粒子の他に、HBs抗原性を有する22mmの小型の球形粒子および管状粒子を肝細胞に生成させ、これらはいずれも血液中に放出されます。HBウイルスキャリアの血液中には、この小型球形粒子が最も多く存在し、ディーン粒子は少ない。

HCV(hepatitis C virus:C型肝炎ウイルス)

C型肝炎の原因ウイルス。

HIV(human immunodeficiency virus)

1983年、モンタニエ博士(仏)によって発見され、翌84年、ギャロ博士(米)らによって分離され後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスとして確認されたものでレトロウイルスの一種です。HIVの糖タンパク質は、ヒト免疫調節機能にかかわっているリンパ球などが主として持っているCD4レセプターに特異的に反応を起こし、細胞に侵入して破壊するため免疫不全が起こります。HIV-1、HIV-2に大別されます。

HLA(human leucocyte antigen)

血小板や白血球にも赤血球と共通の型抗原があるほかに、それらに固有の型(抗原)があり、これをHLAといいます。
HLAは大別してA、B、C、DR、Dの5つの抗原座があり、各々がさらに細分されて合計約90種の型が知られています。HLAには民族特有の抗原分布が知られていますが、抗原の検査意義は組織移植生着性の決定、疾病の感受性、人種の起源、親子鑑定に役立ちます。

HTLV_1(human T lymphotropic virus type I)

成人T細胞白血病(ATL)の起因ウイルス。また、レトロウイルスの一種。

N

NAT(Nucleic acid Amplification Test)

NAT(Nucleic acid Amplification Test:核酸増幅検査)は、ウイルスなどの遺伝子を構成する核酸(DNA、RNA)の一部を大量に増幅することによってウイルスを検出する方法です。 現在NATには、ロシュ社のPCR(Polymerase Chain Reaction)法、ジンプローブ社のTMA-HPA(Transcription Mediated Amplification Hybridization Protection Assay)法、アボット社のLCR(Ligase Chain Reaction)法などがあります。NATは、抗原・抗体検査に比べ、ウインドウ・ピリオドを短縮できる検査方法です。

R

Rh血液型(Rh blood group)

Rh式血液型の関連抗原には、C、c、D、E、e抗原があります。Rh陽性(Rh(+))、Rh陰性(Rh(-))というのは、血球にD抗原の有無を示すものであり、陽性はD抗原が存在することを意味し、陰性はD抗原が存在しないことを意味しています。

RNA(リボ核酸)

RNAは化学構造的に、塩基、D-リボース、リン酸から構成されるヌクレオチドが鎖状に重合したポリヌクレオチドです。塩基成分は主に、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシルの4種類です。細胞の核や細胞質に多量に含まれ、生体内のRNAは核のDNAを鋳型とし、その塩基配列を写しとって合成されます。

S

S/D処理法

S/D処理法は、有機溶媒と界面活性剤の両薬剤の特質を利用して、ウイルスの外側にある脂質膜(エンベロープ)を溶かしてウイルスの感染力を失わせます。この処理によって、脂質膜を持つウイルス(HIV、HBV、HCV等)を完全に不活化します。

T

T細胞(T cell)

骨髄でつくられ、胸腺に至り、ここで分化してリンパ系組織に現れた細胞をT細胞といいます。免疫応答の制御を分担し、リンパ球の一つです。

W

WHO(World Health Organization)

1948年に創設された世界保健機関のことで国連の専門機関の一つ。保健衛生向上のための国際協力を目的に持ち、伝染病の流行情報や衛生状況の交換などに重点をおいています。

アルブミン(albumin)

生体細胞や体液中に広く分布する一群の単純タンパク質の総称。水、希塩酸、アルカリなどに溶けやすく、分子量もタンパク質の中では比較的小さく、数万程度。高濃度の塩類溶液で簡単に結晶化されます。また、アルブミンは、植物性アルブミンと動物性アルブミンに大別されます。

アルブミン製剤(albumin product)

アルブミンには、栄養物質、代謝産物、薬剤の輸送や浸透圧の維持などの働きがあり、これを製剤化したもので血漿分画製剤の一つです。

アルブミン対グロブリン比(A/G)

血清蛋白はアルブミン(A)とグロブリン(G)に分けられ、その比率は健康な人では一定の範囲にあります。ですが、病気によってはその比率が変化(主に減少)してきます。

遺伝子組み換え製剤(gene recombination product)

遺伝子組み換え製剤(リコンビナント製剤)とは、血漿中に含まれる凝固因子を造る遺伝子(DNA)を動物の細胞の核に組み入れてその細胞を増殖させ、凝固因子を生成させることによって製造されるものです。

インターフェロン(interferon)

インターフェロンとは、ウイルスの増殖を抑制する物質の総称で、α、β、γの3種に大別されます。種依存性、また、ウイルスに対しては非特異的であることなどが特徴としてあげられます。

液状加熱処理法

液状加熱処理法は、製造工程中の有効成分を液体の状態で加熱する液状加熱、最終製品の凍結乾燥後に粉末の状態で乾燥した空気を熱媒体として加熱する乾燥加熱や、蒸気を使う蒸気加熱などがあります。血漿分画製剤のアルブミンは、熱安定性のタンパク質なので、製造工程中で液状加熱(60度、10時間)を行っています。

オープン方式

献血受け入れ方式の一つで、献血の器材を持参して、各事業所や学校の会議室、公民館等の集会場を会場として行うものです。

解凍赤血球濃厚液(Frozen Thawed Red Cells:FTRC)

血液から血漿の大部分を除去し、凍害保護液を加えて凍結保存した後、これを解凍して、加えた凍害保護液を洗浄除去した液剤を解凍赤血球濃厚液といいます。凍結状態で10年間の保存が可能であり、用事、解凍し調製するので稀な血液型の血液の保存などに利用されます。また、凍害保護液を除去するための洗浄操作により、血漿成分がほとんど全部、白血球、血小板についても90%前後が除去されます。4~6℃で保存され、有効期間は製造後12時間です。

顆粒球(granulocyte)

白血球の一つ。顆粒の色素に対する染色性から、好中球、好酸球、好塩基球に区分されます。オキシダーゼ、及びペルオキシダーゼ反応は陽性であり、その大きさは10~20μ程度。食作用にも関係し、鉄の含量も高い。

肝炎(hepatitis)

肝細胞の炎症を伴う肝臓疾患のことをいい、単純性黄疸、流行性肝炎、血清肝炎、アルコール性肝炎などがあります。

γ-GTP(γ-glutamyl transpeptidase)

γ-glutamyl peptideを加水分解して、γ-glutamyl基を他のpeptideやアミノ酸に移転させる働きをもつ比較的安定的な酵素で、腎、膵、肝、心筋、脾などに多く含まれます。

血液凝固因子(coagulation factor)

血液凝固の機序に直接関与する種々の因子のことを血液凝固因子といいます。第I因子からXIII因子(第VI因子は欠番)までの12種類があり、出血に際しカスケードと呼ばれる経路により反応を増幅しながら次々に活性化して血液を凝固させ止血します。

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt Jakob Disease:CJD)とは、稀に見られる中枢神経系の致死的疾患のことです。CJDの症例の多くは弧発性で、その感染及び発症機序は不明です。

グロブリン(globulin)

動植物界に広く分布する一群の単純タンパク質の総称。アルカリ性または中性の希塩類溶液に溶けやすく、50%飽和の硫酸アンモニウムで塩析されます。グロブリンは、植物性グロブリンと動物性グロブリンに大別されます。

血圧(blood pressure)

血圧とは、心臓のポンプ作用で血液を身体の隅々にまで送り届けるために、常に血液にかけられている圧力のことをいいます。心臓が収縮して血液が全身に押し出された際に上膊の動脈に示される圧力を最高血圧といい、逆に心臓が拡張して血液を迎え入れるときを最低血圧としています。

血液凝固因子製剤(coagulation factor products)

血液が凝固するために必要な種々の因子を血漿から分画精製した製剤。第VIII因子製剤や第IX因子製剤などが主要なものとしてあげられます。

血液の体内循環量

体内を流れる血液の量には個人差がありますが、通常成人の場合、男性で体重の8%、女性では約7%といわれています。例えば、体重が50kgの男性では、約4,000mL、女性では約3,500mLの血液が体内を流れていることになります。

血液比重(blood specific gravity)

血液の濃さを表す数値のことで、同じ体積の水の重さを1とした場合の血液の重さの比です。血液の濃さは赤血球の数に関係があり、血液比重は赤血球の数が多く赤血球の中のヘモグロビン濃度が高い人の血液ほど高くなり、逆に赤血球の数が少なくヘモグロビン濃度の低い人の血液ほど低くなります。日本人の血液比重の標準範囲は、男性では1.052~1.060、女性では1.049~1.056となっています。献血をなさる場合、400mL献血は1.053以上、200mL献血と成分献血は1.052以上が献血していただける基準となっています。

血漿(plasma)

血液から有形成分(赤血球、白血球、血小板)を除いた液体成分で血液の55%を占めます。栄養成分を各組織に運んだり、組織呼吸の結果できた炭酸ガスや老廃物を排出する働きをします。

血漿成分献血

成分献血の種類の一つで、血漿だけを献血する方法です。献血量は献血者の体重別に300~600mLの献血が可能です。一人の献血者からより多くの血漿が採取できるので、血友病の患者さんのために欠かすことのできない血液凝固因子製剤など、血漿分画製剤の安定供給のためにも欠くことのできない献血方法です。

血小板(platelet,thrombocyte)

血液有形成分の一つ。不規則な形の小体で、顆粒に富み核を有しません。その大きさは約2.5μ、血液1ミリ立方メートル中には20~30万個程度存在します。骨髄巨大核細胞の原形質の仮足が切断されてできるもので、血液凝固において重要な役割をはたします。

血小板成分献血

成分献血の種類の一つで、主に血小板を献血する方法です(同時に血漿をいただく場合もあります)。採血量は400mL以内で、一人の献血者から多くの血小板(全血献血と比較して約10~20人分)が採取でき、患者さんへは少人数からの献血で済むため、より安全性の高い輸血を受けることができます。

血小板輸血

血小板輸血は、心臓手術の際など急激に血小板が減少した場合や、血小板産生低下による減少症の場合などに行われる輸血方法です。

血漿分画製剤(plasma derivatives)

血漿に含まれる100種類以上のタンパク質の中から必要なものだけを物理・化学的に分離精製して製剤化したもののことです。主なものとして、血液凝固因子製剤・免疫グロブリン製剤・アルブミン製剤の3種類があげられます。

血漿輸血

血漿には止血に重要な働きをする凝固因子が各種含まれており、血漿輸血は主に外傷や外科手術の際の凝固因子の確保や、それらの欠乏による出血傾向にあるときに行われる輸血方法です。また、不時の出血によるショック症状に対する応急処置にも行われます。

血友病(hemophilia)

血液を固まらせるための血漿に含まれる12種類の凝固因子の一部が遺伝的に欠如して起こる病気のことです。この遺伝子はX染色体上にあり、X染色体を1本しかもたない男性のみに出現します。女性の場合は、X染色体を2本持っていますので出現することはまずありません。
第VIII因子が欠乏したものを血友病A、第IX因子が欠乏したものを血友病Bといい、主な症状は、関節や筋肉での疼痛を伴う深部出血であり、出血しやすく、また一度出血すると止血しにくいため、治療として欠如している因子を血液から分離精製した凝固因子製剤の輸注という形で補う必要があります。

献血者コード

献血者一人一人には10桁の数字からなる献血者コードが割り当てられます。この献血者コードは、献血者情報および献血記録を血液センターのコンピュータシステムに記録するうえで大切な情報となります。

献血ルーム(donation room)

駅前や繁華街などの交通の便のいい場所に設置しています。天候などに左右されず、気軽にゆったりと献血していただけます。

骨髄(bone marrow)

骨の髄腔や海綿骨質の内腔をみたす柔らかい組織で、赤血球、白血球、血小板の形成をあずかる各種の細胞、または脂肪細胞などが存在します。
主要な造血器官の役割を果たし、主として脂肪細胞からなる黄色骨髄と、未熟な血液細胞からなる赤色骨髄とに分類されます。

骨髄移植(bone marrow transplantaion)

骨髄移植とは、白血病などの病気に冒された骨髄幹細胞を、薬の投与や放射線の放射といった前処置により壊した後、HLA血液型の適合するドナー(骨髄提供者)から採取した健康な造血幹細胞を静脈内に輸注(移植)して、骨髄内での造血機能を正常に回復させる治療法のことです。

コレステロール(cholesterol)

中性脂質の一つ。赤血球などの細胞膜を構成する成分として、あるいは血清中の脂質成分としての主要な成分で、エステル型と遊離型があります。

再生不良性貧血

再生不良性貧血とは、骨髄の増殖機能が低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板も減少する病気で、国の難病の一つにも指定されています。原因としては、全く不明の特発性のものと、薬剤や放射線等が原因として起こる続発性(二次的)のものがあります。

臍帯血

母親の胎盤や赤ちゃんのへその緒(臍帯)の中に含まれている血液のことです。 およそ40~100mLの量があります。この中には赤血球、白血球、血小板などの血液細胞のもとになる細胞(「造血幹細胞」といいます)が、骨髄と同じくらいたくさん含まれています。

自己血輸血(autologous blood transfusion)

自己血輸血は、輸血の安全性を高めるための一つの方法として考えられているもので、他の人の血液を用いるのではなく自分の血液を用いる輸血方法です。輸血による免疫反応や新たな感染症等の副作用を防止できる利点があります。

脂質(lipid)

脂肪とも呼ばれ、タンパク質、糖質とともに生体を構成する主要な物質群です。

需給調整

輸血用血液には、季節・天候の影響による献血者の減少が原因する血液型の不均衡や、稀な血液型の患者さんが突然様態を悪化させた場合など、一時的な需給の偏りが発生することもあります。赤十字血液センターでは、こういった輸血用血液の不足により供給に支障をきたすことのないように血液センター間で調整を図っています。

新鮮凍結血漿(Fresh Frozen Plasma:FFP)

採血後6時間以内に血漿を分離して-20℃以下で凍結保存した製剤。有効期間は採血後1年間で使用時は融解して用いられます。血液凝固因子の補給や循環血漿量の減少をきたす疾患などに使われます。

成分献血(aheresis)

成分献血とは、専用の装置を用いて血液中の血漿や血小板のみを採取する方法です。全血献血に比べ時間がかかりますが、献血する前の状態に回復するのが遅い赤血球は体内にお返しするので、身体への負担が軽い献血方法です。成分献血には、「血小板成分献血」「血漿成分献血」「多血小板血漿成分献血」の3種類があります。

赤血球M・A・P(Red Cells M・A・P:RC-M・A・P)

200・400mLの献血血液から遠心操作によって血漿及び白血球層の大部分を除いた後、赤血球を高品質に保存するための溶液(MAP液)を加えた赤血球製剤です。4~6℃で保存され有効期間は採血後28日間です。赤血球製剤の中で最も多く使われている製剤であり、血液中の赤血球の不足や(貧血等)、またはその機能が低下したときなどに使われます。

赤血球(red blood cell,erythrocyte)

血液有形成分の一つで、血液容量の約半分を占め、酸素を運ぶ働きをします。酸素運搬の役割を持つ2価鉄とそれを担うタンパク質からなるヘモグロビン分子を大量に含むので赤く見えます。

赤血球輸血

赤血球は慢性貧血、外科手術前後の輸血、外科手術による出血などに使用されています。

全血献血(whole blood collection)

全血献血とは全ての血液成分を献血する方法で、400mL献血と200mL献血があります。

洗浄赤血球(Washed Red Cells:WRC)

赤血球M・A・Pを原料として、赤血球層を生理食塩液で洗浄した後、生理食塩液を加えた赤血球製剤です。4~6℃で保存され、有効期間は製造後24時間です。血液中の赤血球の不足や、血漿成分などによる輸血副作用の防止を目的に使われます。

造血幹細胞

血液は赤血球、白血球、血小板の血球成分と血漿と呼ばれる液体からなっていますが、これらの成分は初めからその機能を持っているのではなく、次第に成熟と増殖をしてそれぞれの機能を持った各血球になります。この血球の産生の段階でまだ成熟しないままの細胞のことを造血幹細胞といいます。造血幹細胞は、骨髄や臍帯血に多く存在し、抹消血にも含まれています。

総蛋白(TP)

血清中には80種類以上の蛋白が含まれ、種々の機能を持ち、生命維持に大きな役割を果たしています。その総量を総蛋白といいます。

多血小板血漿成分献血

成分献血の一つで、血漿と血小板を同時に献血する方法です。献血量は献血者の体重別に300~600mLの献血が可能で血漿成分献血と同様です。一人の献血者から多くの血小板(全血献血と比較して約5~10人分)の血小板が採取できるので、血小板成分献血と同様に、患者さんはより安全性の高い輸血を受けることができます。また、血液凝固因子製剤をはじめとする血漿分画製剤の安定供給のためにも役立ちます。

単球(monocyte)

単核白血球とも呼ばれ、白血球の4~8%を占める単核の細胞で、最も大きな白血球です。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄分が不足するために起こる病気です。主な症状としては爪の変形が起こるものがあります。

伝染性単核球症

伝染性単核球症は全身のリンパ節腫脹を主症状とする疾患で、EBV(エプスタイン・バー・ウイルス)などの感染により発症し、発症時においては38~40℃前後の発熱を伴います。唾液中に排出されるウイルスが感染源で、主に飛沫感染をします。

貪食作用(phagocytosis)

貪食作用とはマクロファージや顆粒球が体内侵入細菌などを自らの細胞内に取り込んで分解食菌する生体防衛反応のことです。

濃厚血小板(Platelet Concentrate:PC)

血小板だけを採取する専用の機械を用いて作られる製剤です。20~24℃で振とうさせながら保存します。有効期間は採血後4日間です。血小板が減少したり血小板の働きが悪くなって出血したり、あるいは出血が予想される場合などに使われます。

濃厚血小板HLA(Platelet Concentrate HLA:PC-HLA)

血小板製剤の輸血を何度も繰り返して行っていると、体内に血小板に対する抗体が出来て、その後の血小板輸血の効果が見られなくなる場合があります。こういった患者さんには、その患者さんのHLA型と適合する献血者から採取した血小板を用いて血小板製剤を製造して輸血に使用します。これが「濃厚血小板HLA」です。濃厚血小板と同様に20~24℃で振とうさせながら保存し、有効期間は採血後4日間です。

売血(paid blood donation)

有料で血液を提供することで献血とは違います。倫理性や安全性などの点から日本では現在行われていません。

梅毒(syphilis)

梅毒とは、スピロヘータの一種、梅毒トレポネーマの感染によって起こる慢性性病の一つです。梅毒の経過は第1期~4期の4期にわけられます。

白血球除去赤血球(Leukocyte Poor Red Cells:LPRC)

赤血球M・A・Pから特殊なフィルターを用いて白血球を可能な限り少なくした製剤です。白血球が体の中に入ると発熱などの輸血副作用を起こす患者さんや、白血球に対する抗体ができるのを予防する場合にも使われます。4~6℃で保存され、有効期間は製造後24時間です。

白血球(white blood cell,leukocyte)

白血球は、赤血球や血小板と異なり、多くの種類を含み、役割がそれぞれ違っています。役割を大別すると、ウイルスなどの外敵を食べて殺すことと(貪食作用)、免疫を作る(免疫作用)の2つに分けられます。白血球の成分は、顆粒球と単球とリンパ球の3つに分けられ、顆粒球と単球は貪食・殺菌の役割を持ち、リンパ球は免疫の役割を果たします。

白血病(lekemia)

白血病とは、白血球が正常な制御機構からはずれて異常増殖する病気であり、血液の癌とも言われています。この病気で亡くなった方の血液が白みを帯びた赤さであったことから「白血病」と命名されました。通常の血液中の白血球数は1ミリ立法メートルあたり5,000~9,000個ですが、白血病では10万から20万個にも増えることがあり、そのため正常な赤血球、血小板、白血球の生成が低下します。悪性化した細胞の状態によって急性と慢性に分けることができ、また、細胞の種類によってリンパ性、骨髄性、単球性等に区別されて、それぞれに特徴的な血液像が見られます。

ヒトパルボウイルスB19

ヒトパルボウイルスB19とは、脂質膜を持たないとても小さなウイルス(約20~26nm)です。ヒトパルボウイルスB19感染症は主に飛沫感染により伝染し、5~6年周期で流行があります。

貧血

皮膚や粘膜が蒼白になり、疲れやすく、息切れしがちになったりする病気です。赤血球の数の減少やヘモグロビンの量の減少、あるいは赤血球の容量が少なくなる場合などがあります。

不規則抗体検査

血液型には沢山の種類があり、輸血を行う際に考慮する必要がある血液型について、輸血副作用の原因となる抗体の有無を検査するものです。抗体を持つ血液は輸血に用いられません。

プリオン

プリオンとは、ほとんどの動物が保有しているタンパク質の一種です。正常なプリオンは運動神経を維持するのに必要であると考えられていますが、構造が変化し異常型になると体内で分解されないで、能に蓄積されるためCJDを発病すると言われています。プリオンは感染性がありながら、ウイルスでも細菌でもなく、熱、消毒、紫外線、放射線などに耐性が強い粒子です。

平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)

赤血球の一定容積に対するヘモグロビン量の比をパーセントで表したもので、ヘモグロビン量とヘマトクリット値から算出したものです。標準値は32.0~36.0%です。

平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)

赤血球1個に含まれるヘモグロビン量を平均的に表したもので、赤血球数とヘモグロビン量から算出したものです。標準値は26.0~34.0pgです。

平均赤血球容積(MCV)

赤血球1個の平均的容積、すなわち赤血球の大きさの指標となるもので、赤血球数とヘマトクリット値から算出したものです。標準値は80.0~100.0fLです。

ヘマトクリット値(Ht)

ヘマトクリット値は一定の血液量に対する赤血球の割合(容積)をパーセントで表したものです。標準値は男性で39.0~50.4%、女性では34.0~44.0%です。

ヘモグロビン(hemoglobin)

脊椎動物の全て、及び若干の無脊椎動物の血液(赤血球)に含まれる赤い色素タンパク質です。酸素との結合力が強く、体内ではガス交換を担っています。呼吸に必要な酸素を組織や細胞に供給し、組織呼吸の結果できた二酸化炭素を肺まで運ぶ働きをします。

マラリア

マラリアは、ハマダラ蚊に媒介されてヒトに感染する原虫疾患です。このマラリア原虫には、三日熱マラリア、四日熱マラリア、熱帯熱マラリア、卵形マラリアの4種類があります。蚊の唾液とともに人体に注入されたマラリア原虫は数分間で肝細胞に入り、組織型原虫となって増殖をします。やがて10~14日の後、血液の中に入り、赤血球原虫に変化をし、分裂と増殖を繰り返して宿主である赤血球を破壊した後、他の赤血球に侵入します。マラリアの主要症状は発熱、貧血、脾腫で、潜伏期は熱帯熱マラリアで1~4週間、三日熱マラリアで10~14日間といわれています。また、マラリアの中でも熱帯熱マラリアの致命率が高く、脳性マラリア、急性腎不全などの合併症を引き起こしての死亡例がしばしば見られます。

まれな血液型(rare blood group)

発現頻度が非常に低い血液型で、輸血に際して適合血をえにくいものをいいます。

無償の原則

無償の原則とは、血液を提供する側(献血される方)が報酬を受けたり、対価を支払うことがないことです。日本では、この無償の原則に基づいて1964年により国内での血液の確保は献血によってのみ行っています。

免疫グロブリン製剤(immunoglobulin product)

血漿分画製剤の一つ。主成分はIgGで、血漿から分離精製されて重症感染症や低・無ガンマグロブリン血症などに使用されます。

リンパ球(lymphocyte)

白血球の一種であり単核細胞。大きさにより小リンパ球、中リンパ球、大リンパ球に分類される。貪食作用は認められませんが、免疫反応に深いかかわりを持つ重要な細胞です。リンパ球を免疫機能面から分類すると、ヘルパー細胞、NK細胞、サプレッサー細胞などに分類され、分化や抗原の違いによっても分類することができます。
また、リンパ球の母細胞はリンパ芽球ですが、これは骨髄で造られます。リンパ球は骨髄で造られた後の分化の違いによって、T細胞とB細胞に大別されます。