仕事と子どもが生活の中心だった30代後半に急性骨髄性白血病と診断され、さい帯血移植を経験された小宮さんにお聞きしました。
広報誌「BANK!BANK!_Vol.34」
このページは、広報誌「BANK!BANK!」のVOL.34(PDF:8.4MB)に掲載したインタビューについて、誌面に収まらなかったエピソードを追加して再編集しています。
プロフィール

小宮諒さん
会社員
仕事の傍らがん教育の外部講師として様々な啓発活動にも参加。
小学校で児童たちにがんの正しい理解や家族との向き合い方などを伝えている。
発症を知っても、まったく感情が追いついていかなかった。

仕事と子どもが生活の中心だった30代後半。
急性骨髄性白血病と診断の結果を受けても、何が起きているのか把握できず、状況が急に動きすぎて、感情が追いつかないという感覚でした。言葉は理解しているつもりなのに、それが自分の身体のことだ、という実感がなかなか湧きませんでした。
不安は確かにあったはずなのに、「仕事の手続きをしなければ」など現実の処理が先にきて、実感する余裕がなく、ショックを一時的に保留していたのかもしれません。
入院病棟で妻と顔を合わせ、ひと息ついた時に、初めて2人で泣いた記憶があります。
いちばん辛かったのは時間の感覚が奪われたこと
初期治療として、抗がん剤治療を進めていく中で、症状の詳細を確認していき、移植の必要性について少しずつ説明がありました。
入院していた病院には移植コーディネーターが在籍していて、選択肢を説明いただきました。しかし、血縁者間移植では適合がなく、骨髄移植では適合条件の面で難しい点もあり検討は行われましたが、その後、さい帯血移植を主治医から提示していただき、比較検討のうえ、さい帯血移植を受ける判断をしました。
治療中は、時間の感覚が奪われ、いつまで、どこまで、何を目安にがんばればいいのか。それが曖昧なまま、「今日を乗り切る」繰り返しがなにより辛かったです。適合するさい帯血が見つかったと聞いた時には、安心というより少し肩の力が抜ける感じでした。ずっと宙に浮いていた予定表に、移植予定日が入ったことにホッとした、という感覚でした。期待しすぎないように、さい帯血が見つかった=ゴールではない、ここからが本番、そう自分に言い聞かせていました。
移植後、生着が確認されてから、少しずつ「この先どう生きるか」「どんな生活になるのか」という問いが、頭の中に戻ってきました。生活面でも、以前のように動けるわけではないけれど、一日のリズムや体調を基準に生活を組み直す意識が生まれました。無理に元に戻そうとするのではなく、今の身体に合わせて、できることを選び直す。その感覚が、この頃から少しずつ始まっていたんだと思います。生着は、「元通りになる合図」ではなく、新しい前提で生き直す入口だった。今は、そんなふうに思えています。
※生着(せいちゃく):血管から注入されたドナーの細胞が患者さんの骨髄に定着し、「白血球」「赤血球」「血小板」を作り始めること。移植が成功し、回復に向かうための重要なチェックポイントです。
あなたの選択が確かに「その後の時間」をつないでくれた

今あらためて考えると、提供者の方の存在は、「命を救ってくれた誰か」というより、「私の人生の続きを作っていただいた人」とそんなふうに感じています。顔も名前も知らない。どんな事情で、どんな思いで提供してくださったのかも分からない。でも、その選択がなければ、今の私はここにいない。
だから、あなたの選択が、私の「その後の時間」を確かにつないでくれていて、いただいた時間を少なくとも雑には扱わないように生きていこうと考えています。
そして、提供いただいたさい帯血が「実際に移植医療に使われる」までに、採取や調製、移植医療を支えてくださった多くの方々の積み重ねがあったことにも、今は想像が及ぶようになりました。
提供に関わってくださったご家族の皆さま、そして医療者を含む関係者の皆さまへ、心から感謝しています。
さい帯血の提供を検討中の方へ。
私がいま願うこと

私の立場から何か言葉をお伝えするとしたら...
もし提供を検討しているあなたに迷いや不安があるなら、それはとても自然なことだと思います。あなたが考えた末に選んだ判断は、どんな形であっても誰かの時間と確かに地続きになります。
私にとって、皆様のさい帯血の提供は、日常をそっと次につないでいただいた選択となりました。ぜひ、このような命をいただいた経験を見ていただき、少しでも前向きに検討いただくきっかけになればと願います。
いま、あなたにできること
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