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血小板輸血による血小板数増加を予測するにはどうすればよいのですか?

1)血小板増加数

血小板減少の患者に血小板製剤を輸血する場合、患者の血小板数、循環血液量、重症度などから、目的とする血小板数の上昇に必要とされる投与量を決定します。血小板輸血直後の予測血小板増加数(/μL)は、次式により算出します1.


予測血小板増加数(/μL)   輸血血小板総数   2  
──────────── ×  
  循環血液量(mL)×103   3  

(2/3は輸血された血小板が脾臓に捕捉されるための補正係数)

そこで、上記の式をもとに輸血血小板必要単位数を算出する式を求めると、次のようになります。


輸血血小板必要単位数(単位)= 血小板上昇期待数*(万/μL)×循環血液量(L)×0.75**


*輸血により上昇させたい血小板数

**血小板製剤1単位分の血小板数2×1010及び血小板が脾臓に捕捉されるための補正係数から求めた係数

循環血液量は小川等の方法2.を用いて患者の身長及び体重から以下の式によって求められます。


(成人男子)BV = 0.168H3+0.050W+0.444

(成人女子)BV = 0.250H3+0.0625W-0.662

BV:循環血液量(L) H:身長(m) W:体重(kg)


患者の循環血液量が4.189Lと求められた場合は、


輸血血小板必要単位数 =(4-1)(万/μL)×4.189(L)×0.75≒9.4(単位)


となります。従って、この患者の輸血に必要な血小板製剤はPC-10と算出されます。

2)有効性の評価

血小板輸血後には、輸血効果について臨床症状の改善の有無及び血小板数増加の評価が必要です。血小板数増加の評価は、血小板輸血後1時間前後あるいは24時間前後の補正血小板増加数(corrected count increment,CCI)により行います。CCIは次式により算出します1.


CCI(/μL)   血小板増加数(/μL)×体表面積***(m2)  
= ────────────────────  
  輸血血小板総数(×1011)  

***体表面積はデュボア(DuBois)の式

S = W0.425×H0.725×K

S:体表面積(m2) W:体重(kg) H:身長(cm)


により求めます。Kは定数で、欧米人についてデュボアが求めたものはK = 0.007184ですが、日本人について高比良が求めたものはK = 0.007246です。ただ両者の差は1%以下で、通常の場合はデュボアの式により表2から求めることが多くなっています3.。合併症などの無い場合には、血小板輸血後1時間前後のCCIは少なくとも、7,500~10,000/μL以上、24時間後には4,500/μL以上の上昇を認めます1.,4.。引き続き血小板輸血を繰り返し行う場合には、これらの評価に基づいて以後の輸血計画を立て、漫然とした継続的な血小板輸血を行うべきではありません1.。血小板寿命は約10日ですので、投与間隔は症例ごとに決めるべきですが、一般的には2~3日に一度の間隔とするのがよいとされています5.

但し、表1にあるように患者が何らかの血小板輸血不応状態にあると、CCI値は低くなります。この場合、非免疫性機序が除外されても増加しない場合は、免疫性の原因によるものである可能性を考慮する必要があります4.,6.。免疫学的機序による不応状態の大部分は抗HLA抗体によるもので、一部に抗血小板特異抗体が関与するものがあります。抗HLA抗体による血小板輸血不応状態では、HLA適合血小板製剤を輸血すると血小板数の増加が多くの症例でみられます。表2のような適応症例で、通常の血小板製剤を輸血しても輸血後1時間前後の血小板数の増加が2回以上にわたってほとんど認められず、抗HLA抗体が検出される場合には、HLA適合血小板輸血の適応となります1.

但し、HLA適合血小板製剤の供給には特定の供血者に多大な負担を課すことから、その適応に当たっては適正かつ慎重な判断が必要です1.


表1.血小板輸血不応状態の原因

1.非免疫性機序
発熱
感染
脾腫
血管腫(動脈瘤を含む)
汎発性血管内血液凝固症


2.免疫性機序
抗HLA抗体
抗血小板特異抗体

文献4)より一部改変


表2.HLA適合血小板の適応について

HLA適合血小板は、HLA抗体を産生しランダム血小板に対し不応性を示す患者に適応とされます。

  1. 骨髄移植症例
  2. 再生不良性貧血、MDS、ITPにおける外科的処置、生理出血などの一時的な出血に対する対応
  3. 連続して輸血を必要とするが、血小板輸血により通常の日常生活(quality of life)が可能となる再生不良性貧血
  4. 寛解導入可能な白血病
  5. 予後良好な固形腫瘍

※なお、末期患者、寛解導入不可能な白血病については不適応となります。

参考文献

  1. 血液製剤の使用指針(改定版).2005.
  2. 遠山博編著:輸血学.中外医学社,983-985,1989.
  3. 清水加代子他著:新臨床検査技師講座7臨床生理学.医学書院,256-257,1985.
  4. 山中學他編:血小板.医学書院,261-269,1991.
  5. 寮隆吉著:ベッドサイドの新輸血学.メジカルビュー社,34-39,1990.
  6. 和田攻他編:輸血・血液製剤療法ガイド 増補版.文光堂,143-147,1995.