赤血球M・A・Pを輸血する場合、患者のヘマトクリットやヘモグロビン濃度、循環血液量等から必要とされる投与量を決定します。ここではヘモグロビン濃度を指標としますが、赤血球M・A・P輸血後の上昇ヘモグロビン濃度は次式により算出します1.。
赤血球M・A・Pを輸血する場合、患者のヘマトクリットやヘモグロビン濃度、循環血液量等から必要とされる投与量を決定します。ここではヘモグロビン濃度を指標としますが、赤血球M・A・P輸血後の上昇ヘモグロビン濃度は次式により算出します1.。
上昇ヘモグロビン濃度(g/dL) | 投与ヘモグロビン量(g) | |||
= | ───────────── | |||
循環血液量(mL)×10-2 |
そこで、上記の式をもとに輸血赤血球必要単位数を算出する式を求めると、次のようになります。
輸血赤血球必要単位数(単位)=ヘモグロビン上昇期待濃度*(g/dL)×循環血液量(L)/2.25**
*:輸血により上昇させたいヘモグロビン濃度
**:赤血球M・A・P 11単位分(200mL由来)のバッグ当たりヘモグロビン量を22.5gとする(表1)。
表1 赤血球M・A・Pの成分含量
ヘモグロビン濃度 (g/dL) |
容量(mL) | ヘモグロビン量 (g/bag) |
|
---|---|---|---|
RC-M・A・P200(n=88) | 17.4±1.0 | 129.2±7.9 | 22.5±2.5 |
RC-M・A・P400(n=57) | 18.6±0.8 | 266.0±18.4 | 49.5±5.5 |
北海道赤十字血液センター
また、循環血液量は小川等の方法2.を用いて患者の身長及び体重から以下の式によって求められる。
(成人男子)BV = 0.168H3+0.050W+0.444
(成人女子)BV = 0.250H3+0.0625W-0.662
BV:循環血液量(L) H:身長(m) W:体重(kg)
たとえば、身長160cm、体重50kgの女性患者で、ヘモグロビン濃度を5.5g/dLから8.0g/dLに上昇させるのに必要な赤血球M・A・Pの必要単位数を求めてみます。循環血液量は、上記の式によって3.512Lと求められますので、
輸血赤血球必要単位数 =(8-5.5)(g/dL)×3.512(L)/2.25≒3.9(単位)
となります。従って、この患者に必要な赤血球M・A・Pは4単位分と算出されます。
慢性貧血を示す患者の望ましいヘモグロビン値は、症例ごとに様々です。術前:10.0g/dL以上、日常生活:8.0g/dL以上、ベッドでの生活:6.0g/dL以上などが一応の目安としてあげられます1.。
また、再生不良性貧血における輸血の基準は患者の状態によって異なりますが、比較的若年者では心肺機能に異常が無ければ、ヘモグロビン値7~8g/dLの維持を目標とします。高齢者、心肺機能異常、全身状態の悪化例などでは1~2g/dL高めに維持します。骨髄異形成症候群のうち緩徐に経過する不応性貧血での輸血は再生不良性貧血に準じます。白血病においては、しばしば全身状態の悪化を伴う場合が多く、ヘモグロビン値8~9g/dLに維持することが望ましいとされています3.。
ヘモグロビン値のみを基準として正常値近くに保つように輸血を繰り返すと、患者は鉄過剰症になります。それは、1単位(200mL由来)の全血(赤血球)製剤には約100mgの鉄が含まれていますが、1日の鉄必要量及び最大鉄排泄量が1mgであり、投与される鉄の量が過剰となるためです。従って、単なるデータの補正のための輸血は避けなければなりません1.,3.。